予備試験を目指すヘボ受験生が書いたヘボい答案を晒すブログ

2019年12月から本格的に司法試験・予備試験の勉強を始めた私が書いたヘボ答案を晒すブログです。

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第15問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

 小問⑴はコンビニに行くために友達の自転車を勝手に使って返した事例、小問⑵は壊すつもりでプラモデルを持ち出し、その後気が変わって自宅に飾った事例です。

両方とも絶妙に微妙な問題で、不法領得の意思を中心に構成要件の住み分けを考える本当にいい問題でした。

特に個人的には⑵の方が難しかったです。。。

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

 

 

【答案作成状況】

・時間制限

なし。サクサク解こうかと思いましたが、めっちゃ悩んでしまい3時間近くはかかったと思います。

・基本書・判例集の参照

毎度お馴染み、山口厚先生の『刑法(第3版)』、『判例ラクティス』をゴリゴリ参照しました。

・解答例を事前に見たか

途中までは頑張ったんですが、小問⑵の器物損壊罪の検討あたりでギブアップ。占有離脱物横領罪の構成はカンニングの賜物です。

 

 

【私の答案】

第1、小問⑴について

1、甲がAの自転車を持ち出した行為につき、窃盗罪(235条)が成立するか。

⑴上記自転車は甲にとって、「他人」Aの「財物」にあたる。そして「窃取」は他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己または第三者の占有に移転する行為を意味すると考える。甲はAに無断で上記自転車を持ち出しているのだから、占有者Aの意思に反して、自己にその占有を移転したと言える、

⑵そして、上記客観的構成要件に対する認識・認容に欠けるところはない。

⑶そうだとしても、権利者排除意思と利用処分意思を内容とする不法領得の意思が甲の上記行為に認められるか。

まず、本罪の成立に不法領得の意思を要すかが問題となるも、本罪と不可罰の使用窃盗の区別のために権利者排除意思が、本罪と毀棄罪の区別のために利用処分意思が、それぞれ必要であると考える。

ア)利用処分意思が、窃取した財物の経済的用法に沿って利用または処分する意思をいうところ、甲はAの自転車を、コンビニエンスストアに移動するという自転車の経済的用法に沿って、これを利用したと言える。よって、甲の行為に利用処分意思は認められる。

イ)では、権利者排除意思は認められるか。権利者排除意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の物のように扱う意思をいう。かかる意思の有無については、権利者による利用可能性の侵害の大小、当該行為に被害者が認める損害の大きさなど行為に関わる諸事情を考慮して判断すべきである。

ウ)甲が自転車を元の場所に戻すことができたのは上記持ち出し行為より4時間後であり、比較的長時間に渡りAの本件自転車の利用可能性を絶っている点を考えると、かかる意思は認められそうに思える。しかしながら、上記行為がなされたのはAによる自転車の利用可能性が低い深夜であり、また行為の対象も自動車などに比べて比較的損害の軽微な自転車であった。さらに甲は上記行為をなした際には、30分という短時間の借用を想定しており、かかる想定が覆ったのも偶然友人とコンビニエンスストアで出くわして長話をしてしまったという偶発的な事情が原因である。そして、結果として4時間という時間は経ったが、甲は乗り捨てや損耗などすることもなく、自転車を元の場所に返している。このような事情を考えるに、甲の行為に認められる権利者Aを排除する意思は少なくとも相当に軽微なものであり、窃盗罪による可罰を要するほど強い意思と認めることはできない。

エ)よって、甲の上記行為には不法領得の意思が認められない。

⑷よって、上記行為に構成要件該当性は認められず、本罪は不成立となるから、甲は罪責を負わない。

第2、小問⑵について

1、乙がなしたBのプラモデルを持ち出した行為について検討する。

2、上記行為につき、窃盗罪(235条)が成立するか。

⑴Bのプラモデルは乙にとって「他人の財物」にあたる。そして、前述の「窃取」の意義に照らし、Bに無断でプラモデルを持ち出す行為は「窃取」にあたる。

⑵そして、上記客観的構成要件に対する認識・認容に欠けるところはない。

⑶そうだとしても、乙の上記行為に不法領得の意思が認められるか。

ア)乙のなした行為は返却する意図もなく、権利者Bを排除するものであるから権利者排除意思は認められる。

イ)では、利用処分意思は認められるか。

乙は上記行為後、確かに窃取した本件プラモデルを自宅に飾っており、これはプラモデルの経済的効用に沿って利用しているとは言えるものの、少なくとも行為時点においてはBへの嫌がらせの意図でプラモデルを壊す意図を有しているのであるから、行為時における利用処分意思を認めることはできない。

ウ)よって、乙の上記行為に不法領得の意思は認められない。

エ)よって、乙の上記行為は本罪構成要件に該当せず、本罪は成立しない。

3、では、乙の行為に器物損壊罪(261条)が成立するか。

⑴乙の行為に本罪における実行行為性は認められるか。

「損壊」とは物の効用を害する一切の行為をいう。よって、甲がプラモデルを叩き壊す意図で持ち出した上記行為をなした時点で、プラモデルの効用を害する現実的危険は発生していたと言えるから、少なくとも「実行に着手」していたと言える。(43条本文)

⑵しかしながら、乙は上記行為後にプラモデルを気に入り自宅に飾っており、プラモデルは少なくとも有形的には毀損しておらず、物の効用を害するという結果が発生していないようにも思える。

ア)そこで、本罪の既遂時期が問題となる。

イ)前述の通り、「損壊」とは物の効用を害する一切の行為をいうところ、隠匿その他の方法によって対象物を利用できない状態におくことは「損壊」に含みうる。しかしながら、利用を妨げる行為全てが「損壊」に該当するとまでは言えない。よって、物の効用を害したかという観点に照らして、当該行為着手以降の経過が「損壊」と同様と評価できると言える時点をもって本罪既遂とすべきであると考える。

ウ)乙の上記行為は確かにBをしてプラモデルの行方が分からなくする隠匿行為と言えるものであり、Bによるプラモデル利用を妨げる行為と言える。しかしながら、物そのものの効用を害したかという観点に照らせば、その後、乙が飾っていることから考えてもプラモデルそのものの効用を減少ないし消滅させたとまでは言えず、「損壊」と同様と評価することはできない。したがって、本件乙の行為は既遂には至らなかったと考える。

⑶そして、本罪に未遂規定がない以上は、既遂に至らなかった乙の行為に本罪は成立せず、不可罰となる。

4、しかしながら、Bの占有を離脱し自己の占有に移転したBの所有物たる本件プラモデルを自宅に飾る乙の行為は、権利者Bを排除し自己の利用するものであり、不法領得の意思の発現行為と言える。よって、同行為に占有離脱物横領罪(254条)が成立し、乙はその罪責を負う。

以上

 

 

 

 

【感想】

小問⑵が重過ぎて、もはや⑴についてあまり覚えていませんが。。笑

今回は論点ごとではなく、小問ごとに感想をまとめます。

 

①小問⑴

工藤先生の解答例ですと、不法領得の意思の検討前に構成要件該当性を肯定しているように読めます。 

私は(主観的)構成要件の一部だと理解していたのですが、どうなんでしょうか。

 

権利者排除意思の存否は「権利者による利用可能性の侵害の大小、当該行為に被害者が認める損害の大きさなど行為に関わる諸事情を考慮して判断すべき」とした記述は『判例ラクティス各論』の小林憲太郎先生の記述を参考にしました。

自転車に比べて自動車は権利者排除意思が肯定されやすく、それは利用可能性の価値の大きさが違うことに求められるという記述は興味深かったです。

カーシェアリングがもっと一般化すると、この辺の議論はどうなるのかな、と興味深く思いました。どう推移するかは見当もつきませんが。笑

ただ規範として書くのは工藤先生の規範がスッキリしているように思います。

これは小林先生がどうのではなく、ひとえに私に整理力不足に起因するのですが。

 

あてはめはまあそんな理解を前提にやってみましたが、どうなんでしょうか。。

 

答案を書いてく上で、成立させるかさせないか答案構成時点でかなり迷いました。

山口先生の本や判例ラクティスを読んだ中で、混乱してましたし。

どうしよう?と思った挙句、「もう結論から決めちゃおう」という荒っぽい考えに至りました。笑

この甲は罰するべきか罰しないべきかを自分の中の社会通念に聞いてみて、「刑法で罰するほどのことか?Aに甲を怒ってもらえば済む話なのでは」と思い、その結論までの過程を説得するつもりで書いた次第です。

この答案作成態度がいいものかは私にはわかりません。。

 

②小問⑵

さて、今回、ここでエグいぐらい悩みました。

工藤先生の解説には、

悩みを示しておくことで、評価を上げることはできます。

とありますし、友人の司法試験合格者からもそうだとは聞いてるんですが、私のは悩みすぎではないでしょうか。笑

かなり苦しい答案だな、と思いながら書きました。

 

工藤先生と予備試験合格者の答案例では窃盗の次に占有離脱物横領に行ってました。

これは器物損壊は検討しなくていいんでしょうか。

利用処分意思に毀棄罪と窃盗罪を区別する機能があるということなので、利用処分意思が否定されたのならとりあえず毀棄罪を検討する余地がありそうと割と素直に気軽に踏み込んだんですが。これが意外に富士の樹海でした。ちなみにまだ帰ってきてません。笑

乙さん、家に持って帰ってるんで、甲として物の効用を害されたと言えるんじゃないか、と思ったんですが。

不法領得の意思を定義づけた(らしい?)教育勅語事件(校長の失脚を狙って教育勅語を隠匿した教師の窃盗罪の成否が問われた)【大審院大正4年5月21日】では、利用処分意思がないってことで窃盗罪の成立は否定されたようなんですけど、これは器物損壊罪とかは成立したんでしょうか?

他人の養殖池から鯉を勝手に流出させた事例【大審院明治44年2月27日】では261条の「傷害」が、競売阻止の目的で競売事件記録を隠匿した事例【大審院昭和9年12月22日】では258条の「毀棄」が、それぞれ肯定されてるようで、これは物自体は何も損耗していない以上、権利者にとっての効用を害したという側面から毀棄行為該当性を肯定してるんですよね、きっと。たぶん。

となると、今回も「損壊」を肯定して良かったように思うのですが。。。

 

このあたりで確か工藤先生の解答例をカンニングして、占有離脱物横領罪の構成に気付き、これは書いとこうという半ば打算的な答案戦略ならぬ練習戦略もありました。笑

だけど、それとは別に強姦目的で誘拐した女性の携帯電話を取り上げた行為の「損壊」行為該当性が問題となった(その後、女性が逃走して被告人は携帯電話を川に捨てた)事例【大阪高裁平成13年3月14年】を見つけたのが大きい理由です。ここでは、(厳密な理由付けは私には読み取れなかったのですが)取り上げた時点での「損壊」既遂を否定しました。(川に捨てた時点で既遂と判断)

となると、私が書いた筋になると思いました。

ただ、この事例では携帯電話を取り上げて利用を妨げた時間は約3分と短い時間であり、この短い時間の利用妨害行為をもって「損壊」とするのは無理があると大阪高裁は考えたとも十分に読める気がします。そうだとすると、今回の家に持って帰ったという事例にはそのまま妥当しないんじゃないかというのが今の時点での私の感想です。

つまり、まとめると。

この裁判例の枠組みを援用したとしても、家にプラモデルを持って帰って、少なくとも飾ってる時点ではBによるプラモデルの効用を十分に害してると言え、「損壊」の既遂に達してたんじゃなかろうか?と思えるのですが、どうなんでしょう。

 

占有離脱物横領はただただ書きたかったです。。笑

 

 

こういう風に考えると、今回の事件は器物損壊罪も十分検討に値するように思えたのですが。。

工藤先生と予備試験合格者が揃って検討してないところを見ると不安ですね。。

どう考えても器物損壊が該当しない事実を見落としてのかな。

ちょっとわかりませんね。

 

(2019.12.14追記)

よく考えたら、乙の家に飾る行為自体で占有離脱物横領罪が成立するので、利用処分意思が毀棄罪と領得罪を区別する機能からしても、飾る行為には器物損壊罪は成立しないですね。

だとすると、家に飾るより以前の段階までしか器物損壊罪は成立しないということになるので、そこまでの過程でBにとってのプラモデルの効用がなくなったか減ったと言える事情がない限りは、そして持ち出し行為それ自体が「損壊」と評価できない以上は、器物損壊罪の成立余地はないのかも。

となると事情次第な感じはするし、この問題ではそのあたりの事情が詳らかにされてる訳ではないので、少なくともこの問題の解答にあたっては、器物損壊罪について書くとしても軽くということになるんだと思います。器物損壊に関する決定的な事情が問題文に書いてない以上は、出題者の意図に沿わないのだと思います。

それとも①持ち出し行為②持ち帰り行為③飾る行為の3つに分けて、②で器物損壊罪が成立するのもありなのかな?

ややこしいし屁理屈感が我ながらエグいですね。笑

どちらにしろ、問題文から読み取れる範囲での、出題者が書かせたい路線からは外れてそうですね。

(追記終わり)

 

というか、私の中の社会通念に聞くと窃盗罪を成立させたいな、と言ってました。笑

けど、行為時に壊す気でいたなら、やっぱり難しそうですよね。

 

まあ、これ以上深入りしても解決しないと思うので切り替えて先に進みます。

 

あ!Bの家に入った住居不法侵入は普通に落としてます。笑

反射的に出ないようにしないとな。。。

 

以上です。

 

 

 

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