予備試験を目指すヘボ受験生が書いたヘボい答案を晒すブログ

2019年12月から本格的に司法試験・予備試験の勉強を始めた私が書いたヘボ答案を晒すブログです。

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第4問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

小問⑴は首を絞められたものの生きていて、その後土中に埋められた被害者が死亡してしまった事例(大審院大正12年4月30日)が素材の問題、小問⑵はいわゆる「早すぎた構成要件」が問題となるクロロホルム事例(最高裁平成16年3月22日)が素材の問題でした。

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

【私の答案】

第1、小問⑴の甲の行為につき、殺人罪(199条)の成否

1、客観的構成要件該当性

⑴甲のAの首を締めた行為(以下、第一行為)は、A死亡という結果を惹起する現実的危険を有するので、その実行行為性は認められる。そして、A死亡という結果が発生している。

⑵しかし、Aは第一行為ではなく、甲によるAを砂に埋める行為(以下、第二行為)による窒息が原因で死亡している。となれば、第一行為と結果の間の因果関係が否定されるのではないか。刑法上の因果関係の判断基準が問題となる。

⑶そもそも刑法上の因果関係とは、構成要件的結果発生の帰責を行為に求められるのかという法的評価の問題である。よって、行為が有する危険が結果として現実化していれば、かかる因果関係は肯定して良い。

⑷本件の第一行為は、死んだと甲が誤認するほどにAをぐったりさせる程度の強いものであり、それ自体でA死亡という結果を惹起しうる危険な行為である。そして、直接の死因を形成した第二行為は、第一行為でAを殺したと考えた甲がその発覚を防ぐ目的でなしたものであるから、第二行為は第一行為に密接に関連する行為といえる。このような事情を考えると、第二行為のAの窒息死という死因形成への寄与度は確かに第一行為より大きかったものの、それでもなお本件Aの窒息死という結果は、第一行為が有する危険が現実化したものと考えられるので、その因果関係は肯定できる。

2、故意

⑴しかしながら、甲は第一行為によってAを死亡させたと認識している一方、実際にはAは第二行為によって死亡している。行為者の認識する内容と実際に起きた事実に相違がある場合、故意(38条1項)は阻却されないか。

⑵そもそも故意責任の本質とは、反規範的人格態度に対する道義的非難にある。そして、規範は構成要件で定められているのだから、認識内容と実際の事実が構成要件として符合していれば、道義的非難は可能であり故意は阻却されない。

⑶本件では、第一行為によってAが死亡したと甲は認識している。そして、かかる認識と第二行為によってAが死亡したという実際の事実は、「人を殺した」(199条)という構成要件として符合する。よって、甲のA殺害の故意は阻却されない。

3、よって、甲の行為には殺人罪が成立し、甲はその罪責を負う。

第2、小問⑵の乙の行為につき、殺人罪(199条)の成否

1、客観的構成要件該当性

⑴乙のBにクロロホルムを吸引させる行為(以下、第一行為)は、その薬理作用によってB死亡等結果を惹起する現実的危険を有するので、実行行為性は認められる。結果、Bは死亡している。そして、これらの因果関係を妨げる事情もないので、乙の行為につき同罪の客観的構成要件該当性は肯定できる。

2、故意

⑴「実行の着手」(43条本文)について

ア)しかしながら乙をして、クロロホルムで昏睡したBを乗せた車を崖から転落させる行為(以下、第二行為)をもってBを殺害する計画であり、第一行為時点での殺害を企図していなかった。

となれば、第一行為時点では、同罪の故意は欠けていたのではないか。

実行行為時における故意の存在が求められるところ、第一行為において同罪の「実行の着手」が認められるか。「実行の着手」の有無の判断基準が問題となる。

イ)未遂犯の可罰根拠は、構成要件的結果発生の現実的危険性の惹起にある。となれば、「実行の着手」の有無は行為時にかかる危険性が生まれていたかで判断すべきである。特に先行行為と後行行為が一見して別の行為と取れる場合、先行行為時の実行着手性の有無は、両行為の密接性を検討して先行行為時にかかる危険性が生まれていたかで判断すべきである。

ウ)まず本件で先行する第一行為はBを昏睡させるものであり、後行するBを車に乗せて転落死させる第二行為を確実かつ容易にするためになされた点で、乙の計画をして第一行為は第二行為に必要不可欠な準備的行為であった。そして、確かに第一行為がなされた場所と第二行為がなされた場所とは数km離れているので、一見場所的には近接していないようにも思える。しかし乙はこの距離を車で移動しているのであって、恐らくその移動時間が10分程度であったろうことを考えると、両行為の時間的近接性はなお損なわれていない。また、本件事件が人気のない深夜に起こり、かつ第二行為のなされた山中もまた人気がないであろうこと、そして移動が他者から車内をうかがえない自動車でなされたことを考えると、第一行為が成功すれば第二行為に至るまでの間に他者が事態に介入するなどと言った、先行行為から後行行為に至る乙の計画遂行を妨げるような障害が発生する可能性はほぼなかったと言える。

となれば、両行為は密接不可分の関係にあると言えるから、先行する第一行為の時点では既にB死亡という結果の現実的危険性が発生していたと言える。

エ)よって、第一行為時点で乙は殺人罪の「実行の着手」をしていたと言えるから、本件の乙による実行行為時点では故意は存在していた。

⑵因果関係の錯誤について

ア)そうだとしても、乙はあくまで第二行為でBを殺害するとの認識でいる一方、実際にはBは第一行為によって死亡している。行為者の認識する内容と実際に起きた事実に相違がある場合、故意(38条1項)は阻却されないか。

イ)前述した第一の2の⑵の基準で判断する。

ウ)本件では、第二行為によってBが死亡したと乙は認識している。そして、かかる認識と第一行為によってBが死亡したという実際の事実は、「人を殺した」(199条)という構成要件として符合する。よって、乙のB殺害の故意は阻却されない。

3、よって、乙の行為には殺人罪が成立し、乙はその罪責を負う。

以上

 

 

【感想】

①刑法上の因果関係

ここのあてはめは迷いました。

第1行為(首絞め行為)の危険を高いと評価したのですが、高いとするのは果たして必要な作業なのか?

第2行為(土に埋める行為)の方が窒息死との関係では直接的で寄与度が高いので、どうせ第1行為と構成要件的結果は因果関係が弱くなるんだと思うんです。

かと思いきや、第1行為と第2行為は繋がっているから因果関係が肯定となる。

それならば最初からジョイントさせて大きな一つの行為として見て、その行為の危険が現実化したという方がスッキリしないかとも思いました。

介在事情はなくなりますけど。

もしくは第1行為はそんな危険じゃないけど、そこから土に埋めるのは割とよくありそうだから、第1行為はより危険な第2行為を含んでいる危険な行為ということなんでしょうか。

でも、そうだとしても第2行為を独立の介在事情として扱うのはどこかモヤッとするんですよね。

どうも工藤先生の解答例は後者に近い気がします。

ちょっと別の高速道路進入事件(最高裁平成15年7月16日)を見てみると、百選に乗ってる限り、これも監禁暴行行為が単独で危険だという評価はしていないんですよね。

でも、私の答案の書き方は、この事例で監禁暴行行為の危険を単独で高く評価してるようなもんな気がします。

これは判例とはニュアンスが違う気がするのです。

 

うーん、となると、やはり

「第1行為は直接的に結果を発生させる介在事情と繋がっている点が危険」

と評価した方がいい気がしてきました。

いずれにしろ、第1行為の危険を単独で高く評価する私の書き方は問題がありそうです。

 

②因果関係の錯誤

これは規範部分で迷いました。

因果関係の錯誤って第3問の具体的事実の錯誤と違うものなんでしょうか?

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

私は因果関係の錯誤は具体的事実の錯誤の1類型だと思ったんで、第3問で使った規範をそのまま流用したんですが。

でも工藤先生の解答例は書き分けてるんですよねえ。。。

どうなんだろう。

ちょっと今の時点ではわかりませんな。

 

③実行の着手

これも悩みました。

というか、体感的には楽しめたのに、悩んでましたね、この答案。

まあいいや。

 

規範の後半である、

「特に先行行為と後行行為が一見して別の行為と取れる場合、先行行為時の実行着手性の有無は、両行為の密接性を検討して先行行為時にかかる危険性が生まれていたかで判断すべきである。」

の部分はオリジナルです。

というのも工藤先生の論証がここに関しては微妙に入ってこなかったからですね。

密接性・危険性を並列的に基準を立てる感じが私にはよくわからなかったのです。

判例は確かに密接性をすごく重視しているんですが、

第1行為は第2行為に密接な行為であり、…実行犯3名が第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるから、その時点において殺人罪の実行の着手があった…(…は私による省略です)

と述べていて、私には第1行為時点での危険性の有無を導く過程で密接性の論理を用いているように読めました。

ただ、あてはめはほとんど一緒なので、規範はそこまでこだわらなくてもいいのかもしれません。

あと、これは完全な勉強不足だと思うんですけど、『実況論文講義』の解答例には密接性を導き出す過程で

43条の文言上の制約からくる構成要件該当行為の密接性

という論証がされていたのですが、この理由づけもちょっとわからなかったのです。。。

 

 

と、なにやら、わからないを連発して本書をディスってるような記述に感じられていたら、それは完全な誤解です。

論文作成の第1歩として、こんなに理想的な本はなかなかないと思います。

本当にめちゃくちゃいい本です。

いや、本当に。

 

なんか、この後は書きづらいのですが、大事なことなので。

 

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