予備試験を目指すヘボ受験生が書いたヘボい答案を晒すブログ

2019年12月から本格的に司法試験・予備試験の勉強を始めた私が書いたヘボ答案を晒すブログです。

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第6問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

息子に暴行している二人組に父親が鉄パイプを持って止めに入るという典型的な正当防衛の事案です。

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

 

【私の感想】

甲の鉄パイプを振り回した行為につき、Cへの暴行罪(208条)、Bへの傷害致死罪(205条)の成否を検討する。

1、構成要件該当性

⑴甲の上記行為は不法な有形力の行使にあたり、Cへの暴行罪の実行行為にあたる。よって、Cへの暴行罪の客観的構成要件に該当する。

⑵そして、かかる暴行行為を避けようとしたBが転倒し路上に頭を打ちつけ生理的機能を害したのだから、この行為は「傷害」(205条)にあたる。そして、B死亡という結果が発生しているから、Bへの傷害致死罪の客観的構成要件に該当する。

⑶そして、B、Cを追い払うために鉄パイプを振り回すという暴行行為に及んでいるのだから、Cへの暴行罪及び暴行罪の結果的加重犯であるBへの傷害罪の故意は認められる。

⑷よって、上記行為は両罪の構成要件に該当する。

2、違法性阻却事由の有無

⑴そうだとしても、甲は自分の息子Aを蹴りつけるなどの危害を与えるB、Cに対抗する意図で、上記行為に及んでいる。

そこで、かかる行為に正当防衛(36条1項)が成立し、両罪の違法性を阻却しないか。

⑵当初BはAを羽交い締めにして、CはAの顔面を手拳で殴打しており、その後Aが倒れ込んだ後にAを蹴りつける攻撃行為をなおも継続した。これは明らかにB、CからAに対しての暴行罪(208条)が成立する行為であって、Aの身体に対する違法な法益侵害といえるから、「不正な侵害」といえる。

さらにその違法な法益侵害は甲が上記行為に及ぶ時点まで現存していたのだから、「急迫」性も認められる。

⑶しかし、甲は上記行為に及ぶにあたり、息子に危害を加えるB、Cに憤激している。このような攻撃的な意思を有して及んだ行為は「防衛するため」といえるか。防衛石の要否・内容が問題となる。

ア)そもそも正当防衛の成立に防衛の意思を要するか。

36条の趣旨は、急迫不正の侵害への私人への対抗行為を例外的に許容することにある。よって、防衛行為には社会的相当性が求められるので主観面も考慮すべきである。また条文も「防衛するため」と文言上求めているので、正当防衛に防衛の意思は要する。

イ)もっとも、防衛行為は侵害行為に反射的になすことが通常であるから、積極的な防衛の意思まで要求するのは妥当ではなく、単に侵害行為に対応する意思で足りる。また、かかる観点に照らせば、侵害行為に反射的に攻撃的意思が発生するのは自然といえるから、攻撃的意思が防衛の意思を大きく上回りもっぱら攻撃のみを意図しているなどの場合を除いて、攻撃的意思と防衛意思が併存するとしてもなお当該行為は「防衛するため」と認められると考える。

ウ)甲はたしかにAに危害を加えるB、Cに対して反射的に憤激して攻撃的意思を有してはいるが、同時にAの身を守らないといけないという防衛の意思もまた認められるので、甲の行為は「防衛するため」になした行為と言える。

⑷では、甲による上記行為は「やむをえずした行為」と言えるか。行為の相当性の判断基準が問題となる。

ア)正当防衛は「正対不正」の関係でなされるものであるから、緊急避難とは異なり、当該行為以外の手段は選び得なかったことまでは要求されず、また法益のバランスも厳格には求められない。よって、当該行為を取り巻く事情全般に照らして、法益侵害から防衛するにあたり必要限度の行為であれば、「やむをえずした行為」と認めて良い。

イ)B・Cは素手であるにも関わらず、当たれば大怪我を負わせる可能性が低くない約60cmの鉄パイプを振り回した甲の行為は、一見、防衛にあたり必要最小限の行為ではないようにも思える。しかし、甲は48歳である上に一人であるのに対して、Bは21歳、Cは20歳と30歳近くも若く体格も大柄、さらに二人組であることを考えると、B・Cが暴力に訴えたとすれば甲が素手では対抗できないであろうことは容易に想像がつく。さらに周りに人がいないのだから、他者の助けが入るとは想定できない。この状況を考えると、甲がなにかしらの武器に頼らないとAと自身を守りえないと考えることは自然である。そして、鉄パイプはたしかに攻撃力は一定程度あるといえ、刃物とは違い触れるだけで怪我を負わせる類の武器ではない。また、武器になりえるものが無数にある訳でない道端で、武器に頼らざるをえない甲はとっさに落ちていた鉄パイプを用いたにすぎない。さらにその使用容態も、B・Cの2m先で約60cmの鉄パイプを振り回したというのだから、甲が執拗にB・Cに怪我を負わせようとしたとも考えられず、甲はあくまでB・Cを追い払う行為に終始していたと言える。

これら甲の防衛行為を取り巻く事情全般に照らせば、甲の行為はAと自身の身体を防衛するにあたり必要最小限に留まっていたと考えられ、「やむをえずした行為」と認められる。

⑸したがって、甲の行為には正当防衛が成立し、その違法性は阻却される。

3、よって、甲の行為につき、Cへの暴行罪、Bへの傷害致死罪は成立しない。

以上

 

【感想】

ザ・正当防衛の事例という感じがしました。

色々、応用的な正当防衛事例をこれから先は向き合わないといけないんでしょうが、その前提にこういう典型的な問題をしっかり書けるようになるのが当面の目標です。

 

①構成要件該当性

個人的に正当防衛はあてはめ頑張らなきゃいけないのかな、と思っていて、そうなると構成要件該当性は出来るだけコンパクトにしたい気持ちはあります。

けど私は各論をほとんど触っていないのもあるので、練習のつもりで気持ち丁寧にあてはめました。

②急迫性の侵害

前問が急迫性が主戦場となる問題でした。

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 ですから勢い厚く書きたい気持ちも出ましたが、この後に重たい要件検討を最後まで通り過ぎなきゃいけないと思いましたから、ここは「急迫性=違法な法益侵害が現存するか間近に迫っていること」を念頭に、論証を抑えました。

これでも長いかな?と思ってます。

 

③防衛の意思

ここももっとコンパクトに書けたと思います。

まあ、でも今の時点でコンパクトさを求めすぎるよりは、必要十分な論証をしたいと思って丁寧めに書いたつもりです。

④防衛行為の相当性

問題文を見る限り、相当性を検討する事情が散りばめられていたので、ここが主戦場と睨んで、あてはめを丁寧にしました。

本当は「甲よりずっと若くて体力のあるだろうAが、なす術もなくボコボコにされているんだから、おじさんの甲が武器に頼っても仕方ないよね」的なあてはめも思いついたんですけど、ちょっとはしゃぎすぎかな?と思ったのと、それだけで結構長くなりそうな気がしたのと、その割にはめちゃくちゃいいとまでは思わなかったので控えました。余裕があれば書いても良かったかもです。

ちなみに武器対等の原則は規範に盛り込みませんでした。

判例(平成元年11月13日)を見る限り、武器の対等性は考慮要素にすぎないのかな、思ったからです。

なんとなく判例は具体的・実質的に見ていて、規範というよりはあてはめの説得力で相当性を導いているような印象があるので、規範レベルでは割と広めの幅を持たせたかったという意図です。

それで前問で使った、判例最高裁平成29年4月26日)の文言を借用してこんな感じの規範にしましたが、どうなんでしょうか。

あてはめに関しては、

 

相当性を否定しそうな事情(武器を持ってたとか)→実質的には戦力差がある、助けは期待できない。だから武器は必要→武器の強度は最小限度、他に武器になりそうなものはなかったからチョイスとしても最小限度→防御の容態も最小限度→だから必要でかつ程度も最小限の防衛行為

 

という風に段階を踏んで必要最小限という規範の要件該当性を論証したつもりです。

 

 

個人的にはあてはめ好きなんですけど、はしゃぎたくなるのと長く書きすぎな気もするので、ちょっとバランスは気をつけないとですかね、多分。

以上です。

 

 

 

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