予備試験を目指すヘボ受験生が書いたヘボい答案を晒すブログ

2019年12月から本格的に司法試験・予備試験の勉強を始めた私が書いたヘボ答案を晒すブログです。

『工藤北斗の実況論文講義 民事訴訟法』第1問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

民法上の組合を当事者とする訴訟追行可能性、①業務執行組合員を当事者とする訴訟追行可能性を問う事例でした。

 

なぜ、ざっくりなのかはこちら。

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

【私の答案】

第1、甲組合が当事者として訴訟追行することの可否

1、甲の当事者能力について

⑴甲が当事者として訴訟追行できるためには、まず当事者能力が認められる必要がある。しかし、甲は民法上の組合(民667条)に過ぎず権利能力を有しないので、当事者能力もまた認められないのが原則である。(28条)

⑵では、甲は「法人でない社団」(29条)として、当事者能力を認められないか。「法人でない社団」の意義が問題となる。

⑶29条の趣旨は、独立財産を有して社会活動を行い、私法上の紛争主体となりうるものに当事者能力を認め、もって円滑に紛争解決を図る点にある。となれば、組合独立の財産を「共有」(民668条)し、「共同の事業を営むことを約」(民667条1項)することで社会活動を行う民法上の組合もまた私法上の紛争主体となりうるから、その当事者能力を認める必要性はある。一方で、団体としての一貫性がないものにまで当事者能力を付しても円滑な紛争解決は図れない。そこで、当該民法上の組合が①団体としての組織をそなえ、②多数決の原則が行われ、③構成員が変動しても団体が存続し、④代表の方法、総会の運営、財産管理など団体の主要な点が確立している場合には、これを「法人なき社団」と認めるべきと考える。

⑷本件における甲がこれらの要件を充せば、「法人でない社団」にあたる。

そして、甲はAを業務執行組合員としているから、「代表者の定め」があると言える。(29条)

⑸したがって、甲に当事者能力が認められうる。

2、甲の当事者適格について

⑴当事者能力が認められるとしても、甲が訴訟追行できるためには、さらに当事者適格が認められる必要がある。

しかし、当事者適格は、訴訟物たる実体法上の特定の権利・法律関係についての法的利益の帰属主体に認められるから、実体法上の権利能力を有さない甲には認められないのが原則である。

⑵では、Aらではない第三者の訴訟担当として、甲は訴訟追行し得ないか。

ア)民法上の組合をその組合員の訴訟担当とすべきという明文上の規定はなく法定訴訟担当の構成はとりえない。では、任意的訴訟担当の構成はとりえないか。

イ)前述のように甲が当事者適格の前提となる当事者能力を得るためには、「法人でない社団」(29条)に該当する必要がある。よって、この場合に甲は法定されてる任意的訴訟担当である選定当事者(30条)とはなりえない。

ウ)では、任意的訴訟担当者は選定当事者以外どこまで認められるか。

エ)選定当事者は授権に基づく任意的訴訟担当が許される原則的な場合であるから、これ以外の任意的訴訟担当が全く許されないとは考えられない。しかし、これを無制限に許せば、法が訴訟代理人を弁護士に限定し(弁護士代理の原則、54条)、訴訟信託を禁止したこと(信託10条)で本来の権利義務の帰属主体を保護し、かつ円滑な訴訟進行を図る趣旨を害しかねない。そこで、当該任意訴訟担当への授権が、これらの規定の趣旨を回避・潜脱する恐れがなく、かつ合理的必要があると認められる場合は、かかる授権を認めて良いと考える。

オ)甲組合は三人という少数であり、実質的には本来の権利義務の帰属主体であるAらと同視できるので、かかる授権によってAらの保護が欠けることは考えがたい。その他の事情は明らかではないが、甲を訴訟担当とすることが円滑な訴訟進行を妨げず、かつそうする合理的必要が認められれば、甲は任意的訴訟担当者と認められうる。

3、結論

よって、甲組合は当事者として訴訟追行しうる。

第2、Aが当事者として訴訟追行することの可否

1、Aの当事者能力について

Aは自然人であるから権利能力を有し、よって当事者能力は認められる。(28条)

2、Aの当事者適格について

⑴AはAらの法定訴訟担当にあたらない。

では、Aは任意的訴訟担当として当事者適格を認められるか。

⑵まず、甲が「法人でない社団」(29条)として認められない場合、Aら三人は共有する乙不動産の所有権を確認する「共同の利益を有する多数の者」と言えるから、「その中から」Aら「全員のために原告」としてAを「選定できる」。(30条)よって、Aは選定当事者として当事者適格が認められ訴訟追行ができる。

⑶では、甲が「法人でない社団」(29条)として認められた場合に、AはAらの任意的訴訟担当となり得ないか。

⑷この点、明文はないが、団体員全てが共同して訴訟追行することは必ずしも効率的とは言えず、また相手方の負担も大きいから、「法人でない社団」であっても任意的訴訟担当の必要性は大きい。しかしながら、法が弁護士代理の原則(54条)、訴訟信託の禁止(信託10条)を定めたことに照らすと、これを無制限に認めるべきではない。そこで当該任意訴訟担当を決めることが、これらの規定の趣旨を潜脱・回避する恐れがなく、合理的必要性がある場合は、これを認めるべきと考える。

⑸本件においてこれを見る。Aは業務執行組合員として、B、Cから包括的に授権されている点から、特段の事情がなければ上記要件を充すと考えられるので、任意訴訟担当として当事者適格は認められる。

3、結論

よって、Aは当事者として訴訟追行できる。

以上

 

【感想】

民訴はほとんど勉強してなくて、論文もほぼ書いたことがないので、論文としてのバランスなどは度外視し、用語の定義と条文の構造・文言を大事にしながら、愚直にあてはめました。

けど、やっぱ理解がおいついてない、かつ慣れてないせいか問題提起の仕方や規範の立て方の迷いがある自覚があります。

 

①「法人でない社団」(29条)の意義、民法上の組合の当事者能力

たぶん、ある団体一般が「法人でない団体」として認められるかという場合は

「29条の趣旨は、独立財産を有して社会活動を行い、私法上の紛争主体となりうるものに当事者能力を認め、もって円滑に紛争解決を図る点にある。一方で、団体としての一貫性がないものにまで当事者能力を付しても円滑な紛争解決は図れない。そこで、当該団体が①団体としての組織をそなえ、②多数決の原則が行われ、③構成員が変動しても団体が存続し、④代表の方法、総会の運営、財産管理など団体の主要な点が確立している場合には、これを「法人なき社団」と認めるべきと考える。」

でいい気はするんですよね。

だから答案は特に民法上の組合が「法人でない団体」として認められるかというもう少し狭い範囲に妥当する規範を立てたことになるんだと思います。

事案によりフォーカスした規範を立てるのが正解か、広めの規範を立ててあてはめに注力するのが正解か。

もちろんケースバイケースなんでしょうが、基本的姿勢としてどちらに軸を置くべきかについては、むむむって感じです。

 

②明文なき任意的訴訟担当者

これも規範の立て方に迷いました。

第1ー2ー⑵ーエで立てた規範と第2ー2ー⑷で立てた規範はゴールは全く同じです。

ただ、前者は授権そのもの一般を扱っている一方、後者は多数の人の任意的訴訟担当を一人(数人もか)にする場合の基準を扱っている点で、前者はより広めで普遍的で抽象的な問題意識を扱っていることになるんだと思います。一方、後者はより狭いけど、事例に即しています。(その意味では第1ー2ー⑵ーエのところで組合を訴訟担当にできるかという問題意識をより鮮明に出すパターンもあり得たはず)

両方出てきたのは正直たまたまなんですけど、まあどちらのパターンも書いとくか、てな感じで両方書いたわけです。

 

①でも述べましたが(問題意識レベルと規範レベルなので少し話が違う気もしますが)、スタンスとしてどちらを重視すべきかちょっと迷います。

個人的な趣味嗜好でいうと、前者はより少ない普遍的な理屈でたくさんの個別事例をバサバサ切ってく感じで、ちょっとかっこいい。

覚えることを少なくできるという受験勉強的実益もあります。

けど、これは事案解決としては迂遠な気もするし、裸の比較衡量ではないですけど事案解決がまちまちになりがちにも思えるのです。

俺個人ですら気分によってあてはめ変わりそう。

そして、なにより実務家を目指すならば、そしてその過程で実務家登用試験に受かりたいのならば、事案解決にフォーカスしないでどうする!という声も内から聞こえます。

つか、事案解決に必要な最小限度に抑えた記述ってそれはそれでスマートで美しいと思うんですよね。

だけどなー、一方でより上位の問題意識・規範を考えることは、枝分かれしたより下位の議論を整理・理解するためにも有益な気はします。

てなことで、どちらの価値観も併存する私としては、その階層を意識しつつ、ちょうどいいバランスを限られた時間の中で模索するしかないんだろうと思いました。(なんの話)

この迷いはうっすら無意識にありましたが、期せずして言語化する契機になったので解いてよかったです。(だから、なんの話)

 

あ、答案作成には解答例ももちろん参考にしましたが、『有斐閣ストゥディア 民事訴訟法(第2版)』もめちゃくちゃ参考にしました。

誰でも知ってるような分厚い有名基本書を二冊持ってるんですけど、私はどうもそれを使いこなせるレベルではないようで。

調べても「んん?」てなってモヤモヤするのです。笑

そんな私からするとこの本はめちゃくちゃいいです。

280Pで、初心者の私が調べたいことはなんとなく大体わかります。

大好き。

 

以上です。笑

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害しまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

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