予備試験を目指すヘボ受験生が書いたヘボい答案を晒すブログ

2019年12月から本格的に司法試験・予備試験の勉強を始めた私が書いたヘボ答案を晒すブログです。

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第7問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

誤想(過剰)防衛の事例でした。

 

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

【私の答案】

1、甲が乙の腹部を登山ナイフで刺した行為につき、殺人未遂罪(199条、203条)の成否を検討する。

2、構成要件該当性

⑴甲の上記行為は同罪の客観的構成要件に該当する。そして、甲は殺意をもって、かかる行為に及んでいるので故意も認められる。

⑵よって、甲の行為は同罪の構成要件に該当する。

3、違法性阻却事由の有無

⑴乙が甲の前に立ちふさがったのは、甲を友人丙と勘違いして驚かそうとしたに過ぎず、よって乙の甲に対する「急迫不正の侵害」(36条1項)は存在しない。

⑵よって正当防衛は成立しないので、違法性阻却事由はない。

4、責任阻却事由の有無

⑴しかし、甲は対立抗争中の暴力団組員が自身を襲ってきたと思い込んで、自らの身を守るために上記行為に及んでいる。つまり、甲の主観をして、違法性阻却事由である正当防衛が成立しうると誤信していた。

このように違法性阻却事由があると錯誤したことをもって、故意責任は阻却されないか。

⑵故意責任の本質は、反対動機が形成され得たにも関わらず、あえて規範に反しした人格態度への道義的非難である。そうであれば、違法性阻却事由があると錯誤した場合、そもそも反対動機が形成されないので、かかる非難可能性は認められない。よって、行為者の主観を基準に違法性阻却事由が認められれば、故意責任は阻却されると考える。

⑶甲の主観を基準に正当防衛(36条1項)が成立するか検討する。

ア)「急迫」

甲は対立抗争中の暴力団に襲われることを予期して護身用のナイフを携行しているので、「急迫」性を失わないか。

36条の趣旨は緊急状況下で公的機関の保護を得られない中、違法な法益侵害に私人が対抗することを例外的に許容したものである。よって、侵害を予期したものにその回避を義務づける趣旨ではなく、予期しただけでは急迫性は失われない。しかし、対抗行為を取り巻く全事情に照らして検討して、かかる趣旨にそぐわない行為には急迫性は認められない。

たしかに、甲は自身への襲撃を予期しているのみならず、ナイフを携行するという予期される法益侵害への一定程度の準備には及んでいる。しかし、そのナイフを持って侵害が予期されるこの機会に積極的に対立暴力団組員を加害しようという意思まではない。さらに自身への襲撃に関する予期の程度は漠然としたものにすぎず、この時点では警察に保護を求める状況にもない。よって、その甲が襲われたと認識し、対抗した上記行為にはなお急迫性が認められる。

イ)「不正の侵害」

甲は乙が自身に殴りかかってくると誤信しており、甲の主観をして「不正の侵害」は認められる。

ウ)「防衛するため」

甲は乙に対して逆上しているが、かかる場合に防衛の意思は認められるか。

正当防衛に求められる防衛の意思は単に法益侵害に対応する意思で足り、かつもっぱら攻撃的意思にもとづいて対抗していない限りは、防衛の意思は認められる。

甲は、逆上して攻撃的意思を有して上記行為に及んでいるが、危険を感じて単に対立組員による法益侵害に対応する意思も併存している。よって、甲の主観をして、防衛の意思は認められる。

エ)「やむをえずした行為」

上記行為に相当性は認められるか。

正当防衛行為には、補充性も厳格な法益バランスも求められず、法益侵害から防衛するための必要最小限であれば、相当性は認められる。

たしかに事件が発生したのは薄暗い夜道であり、他者の助けが期待できない状況であった可能性は高いが、乙は甲が視認できる前に回り込んで右手を振り上げたにすぎない。そして、乙が素手であり一人であることを考えれば、甲がそれにナイフをもって対抗し、相手や状況を確認もせずに即座に乙を刺した行為は明らかに自身を守るために必要最小限の行為とは言えず、相当性は認められない。

オ)よって、甲の主観を基準にしてもなお上記行為には正当防衛が成立せず、甲の故意責任は阻却されない。

5、よって、甲の上記行為には殺人未遂罪が成立し、こうはその罪責を負う。

6、なお、甲の主観をして、上記行為は行為の相当性を欠いたにすぎないので、過剰防衛(36条2項)が成立し、甲の刑は減免されうる。

以上

 

【感想】

新規論点は、誤想防衛における故意の阻却と最後の36条2項についてです。

 

他は違法レベルで論ずるか責任レベルで論じるかの違いはあれど、既に第5問、第6問で扱った論点でいい復習になりました。(上手く書けた訳ではない)

 

36条2項については軽く流しちゃったけど、その趣旨まで遡って結構丁寧に論じないといけなかったくさい。

たしかに誤想防衛は典型的な適用場面ではないのか、と納得。

過失犯の成立可能性があるのでその均衡で免除はないってのはなるほどと思いました。

となると仮に誤想防衛がした場合は、殺人未遂罪不成立→(故意責任が阻却されるにすぎないから?)過失致死は検討可能→成立、みたいな流れになるんでしょうかね。

 

 

この問題は前2問の復習問題の性格もあったと思います。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

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 というわけで、自分なりの練習として論点ごとの記述量のバランスを考えてみました。

個人的には、予期→「急迫」、逆上→防衛の意思、ナイフで素手の相手を刺した→行為の相当性となっていて、正当防衛のどの段階にも満遍なく事実が振られているように問題を読みました。

なので答案構成段階ではそれぞれ同じくらいの分量で論じよう(だから、一つ一つの論点はコンパクトにしよう)と思い書き始めました。

論理を壊さずコンパクトにするのはなかなか難しいですが、これも練習あるのみなんでしょう。

 

工藤先生の解説では、防衛の意思を他より厚めにとのことでしたから、この辺の見極めはもっと頑張らなきゃですね。

ただ、「急迫」性に関する平成29年4月26日の判例に照らすと、やっぱりナイフを携行していた事情は、判例で挙げられた「対抗行為の準備の状況(特に凶器の準備の有無や準備して凶器の性状等)」という考慮要素に引きつけて書きたいと思いました。

 

あ、それと急迫性の検討で、対立抗争中に薄暗い夜道を一人で歩くなよってツッコミは思いついたんですね。

けど、「予期した侵害を回避する義務を求める趣旨じゃないし」「すごい危険な場所に飛び込んだとまでは言えないし」とか考えると、当てはめる過程での扱い方がちょっとややこしくなる感じがしたのでスルーしました。

どちらにしろすごく大きな事実ではない気もしましたし。

 

それと私は「甲の主観においては」って書いてるけど、工藤先生の解答例みたく認識と書いた方がよかった気がします。

故意責任の話してるから構成要件事実の認識・認容という意義に引きつけて書くのが良いのかな、と。

多分通じるとは思うのですが、勉強し始めの今は言葉の使い方もこだわりたいのです。

 

全体を通してみると、スピード感とコンパクト感を重視した結果、安定した答案が書けなかったかもと反省しとります。まあ、今まで書いたのが安定してたかは別論ですが。

以上です。

 

 

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