予備試験を目指すヘボ受験生が書いたヘボい答案を晒すブログ

2019年12月から本格的に司法試験・予備試験の勉強を始めた私が書いたヘボ答案を晒すブログです。

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第10問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

フィリピンパブ事件【最高裁平成4年6月5日】を素材にした問題でした。

ただ、上記事件が過剰防衛の成立にとどまっていたので、(判例と異なる処理とは言え)責任の話に持っていける事例だったのに対し、今回は実行行為者につき、どう見ても正当防衛が成立する事案でした。

というわけで、共同正犯と正当防衛という違法性レベルの話をガッツリしなきゃいけない点で、処理に悩みました。

工藤先生曰く

逃げが通用しません。

 

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

【私の答案】

第1、乙の罪責

1、乙が故意を持ってVの腕めがけて花瓶を投げつけ転倒させ気絶させた行為は、有形力の行使の結果、Vに生理的機能障害を起こした行為であり、傷害罪(204条)の構成要件に該当する。

2、しかし、上記行為はVに日本刀で切りつけられたことへの対抗行為であった。そこで上記行為に正当防衛(36条1項)が成立しないか。

⑴「急迫不正の侵害」

ア)Vが「ぶち殺したるわ」などと言いながら、乙に日本刀をもって乙の腕を斬りつけ、さらには首めがけて日本刀を振り下ろそうとする行為は、少なくとも殺人未遂罪(199条、203条)にあたりうる行為であり、明らかに乙の生命・身体への「不正の侵害」と言える。

⑵もっとも乙はVの元に出向く前に、甲とVの間にトラブルがあること、Vの気性が激しいことを把握しており、Vの元に出向くことに全く気が進まなかった点を考えると、乙はなにがしかの危害をVより加えられる可能性があることを予期していたと言える。

ア)このように「不正の侵害」へ対抗した行為者が侵害を予期していた場合、「急迫」性の要件を充たすか。その判断基準が問題となる。

イ)そもそも36条の趣旨は、違法な法益侵害にさらされた緊急状況下で公的機関の保護を期待できない場合において、私人による対抗行為を例外的に許容した点にある。よって、侵害を予期したものにその回避を義務付ける趣旨ではないから、予期しただけでは急迫性の要件に当然に該当しないとはいえない。しかし、当該対抗行為を取り巻く全ての事情に照らして、36条の趣旨によっても許容できない行為は、急迫性の要件を充たさないと考える。

ウ)乙は確かにVからのなにがしかの危害を予想しており、さらには兄貴分の甲にいざとなれば反撃するように言われていた。しかし、そうであるにもかかわらず、乙は武器を用意するという準備をするわけでもなく、そもそもVの元に出向くことに気が進んでない点からすると、積極的にVに加害する意図など全くない。そして、暴力団の兄貴分からの指示にはよほどのことでなければ逆らい得ないであろうという、暴力団という特殊な世界に属する乙が、兄貴分である甲の指示に従って、Vの元に出向かざるを得ない必要性はあったことは認められる。さらには、Vが乙に危害を加える可能性、そして加えたとしてどの程度かもわからない時点で、しかも暴力団の特殊な事情に理解を示さないであろう警察機関に乙が保護を求める選択をしなかったのは十分理解できる。これらに加えて、Vに甲からの返済金として10万円を手渡したことでVがすぐさま激昂して上記法益侵害行為に及んだことを考えると、乙のとった対抗行為は36条の趣旨によって十分許容できるものであると認められるから、乙の行為は急迫性の要件を充たす。

⑵「防衛するため」

乙は自己の身を守ろうとして上記対抗行為に及んでいるので「防衛するため」といえる。

⑶「やむを得ずにした行為」

日本刀で斬りつけられた乙がそばにあった花瓶をとっさに投げつける行為は十分に相当性があり、「やむを得ずにした行為」といえる。

⑷よって、乙の行為には正当防衛が成立する。

3、よって、乙の行為の違法性が阻却され、本罪は不成立となる。

第2、甲の罪責

1、乙がなした行為は傷害罪の構成要件に該当する。

では、甲が乙に「一発ヤキ入れとけ」などと申し向けたうえ、Vの元に出向かせた行為につき、本罪の共同正犯(60条)は成立するか。

2、もっとも甲は乙をVの元に出向かせただけで現場にはおらず、実行行為をなしていない。かかる場合においても「共同して犯罪を実行した」といえるか。

ア)共同正犯の処罰根拠は、犯罪実現に至る因果性の共同惹起にある。かかる因果性は現場での実行行為がなくても惹起できるので、共同性を基礎つける意思連絡と正犯性を基礎つける正犯意思さえ認められれば、現場で実行行為をしなかったものも「共同して犯罪を実行した」といえる。

イ)甲は乙に「一発ヤキ入れとけ」などと申し向けており、本件傷害行為につき乙との意思連絡がある。そして、金銭トラブルがあったVを傷めつけようなどと考えており、自己の犯罪を遂行する正犯意思もある。

よって、甲は乙と「共同して犯罪を実行した」と言えるので、甲の上記行為は本罪の構成要件を充たす。

2、そうだとしても、甲の行為に違法性は認められるか。

第1で述べた通り、乙の行為につき違法性は阻却されるので、共同正犯が違法性を連帯すると考えれば、甲の行為もまた違法性が阻却されないか。

共同正犯における正当防衛をいかに判断すべきか問題となる。

⑴前述の通り、36条の趣旨で許容できない行為は急迫性の要件を満たさないと考える。そして、共同正犯の場合においては各自が別個の行為に及ぶのが通常であるから、それぞれの行為を取り巻く事情も別個のものであると考えられる。よって、急迫性の要件該当性は行為者ごと個別に判断すべきである。

⑵よって、乙には正当防衛が成立するが、甲の正当防衛の急迫性要件該当性は別個に判断する。

甲は、気の短いVのことだから、乙と喧嘩になる可能性が高いと考えており、甲が有していたVの乙への法益侵害への予期は、乙の有した予期に比べて高い。そして、現金の送付などの手段を用いず、乙をVの元に直接に出向かせる必要性は全くない。そして、なによりも甲は乙へのVによる予期される法益侵害という機会に、乙の行為を介してVを痛めつけるという積極的な加害の意思がある。

かかる行為は36条の趣旨をもってしても許容できる行為とは到底言い難いから、甲の行為に急迫性を認める余地はない

⑶よって、甲の行為につき、正当防衛は成立しない。

3、よって、甲の行為には本罪が成立し、甲はその罪責を追う。

以上

 

【感想】

事例と特殊性は、【問題文をざっくり言えば】の通りで、解説で書かれた通り、理論的に難しく感じました。

 

ちなみにこちら2350文字なんですね。明らか長い。笑

原因は基本的に私のもはや悪癖であるあてはめ書きすぎ問題です。

ぱっぱと処理することを意識しないといけません。

 

そして、今回に関しては論述のバランスを完全に欠いてしまいました。

どう考えても今回は「共同正犯と正当防衛」がメイン論点なのに、実行行為者の急迫性であてはめ頑張りすぎました。

普通の感覚で考えれば、兄貴分に言われて金返しに行っただけで日本刀でいきなり斬りつけられる状況において、急迫性が問題になるとは思えません。いや、あるよね、っていう話。

のに、なんでこんなに頑張るのか。笑

暴力団の特殊事情とかいいから。

 この辺りは冷静に判断できる力を身につけたいところです。

 

 

①侵害を予期していた場合の急迫性の判断基準

いわゆる積極的加害意思が絡む問題。この問題集では既に第5問で出ました。

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 ここで私は【最高裁平成29年4月26日】の判例を元に自分なりの規範を作りました。

で、今回もそれを使ったんですけど。

あ、多分、それですね、バランス欠いた原因は。笑

これを仮に採点者が見たら「29年の判例勉強したんでちゅねー、偉いでちゅねー、それが出題されてテンション上がったんでちゅかー?」となること請け合いでしょう。

そうだよ、ちくしょう。

 

で、詳しくは②で述べますが、私はこの規範を梯子にして「共同正犯と正当防衛」の規範も作ってみました。

 

②共同正犯と正当防衛

最高裁平成4年6月5日】を読む限り、判例はどうやら共同正犯の場合の正当防衛の有無、言い換えれば要件該当性を個別に検討して処理するみたいです。

問題はその処理の理論的背景で、判例は「そう処理する」と述べてるのみで、そこに至る理由づけを述べてくれてません。たぶん。

私が法律の勉強に挫折するより少し前である数年前にこの論点を学んだときはどの学説の説明も、しっくりこなかった気がします。その原因が実力不足の可能性はもちろん大なのですが。

とはいえ、当時の自分から見て、なんか聞く先輩、聞く先輩、聞く先生、聞く先生がみんな違う事言ってた気がする。笑

それでなんとなく理屈はお茶を濁して処理手順は判例にしたがってたような。

 

で、数年ぶりに法律の勉強を再開して、今回、この論点についての工藤先生の解説の言葉を引用すると

その解決策は、学説において百家争鳴の状態ですので、通説といえる立場はありません。 

 とのことで、当時と多分あまり変わってないのだな、と思いました。

受験界通説はあるんでしょうね。これはこう処理しとけ的な。

 

とは言え、へぼいとはいえ私も受験生。なんとか規範を用意しないといけません。

工藤先生も

自説の立場に従って論理一貫した処理がなされていれば十分です。

とのこと。

出来れば判例に沿って、そして願わくば自分が納得できる規範はなんとかならんか、と考えました。

 

つまり「正当防衛の要件該当性は個別に判断する」という【最高裁平成4年6月5日】の処理にゴールにするための理屈ですね。

これを考えなきゃならん、と。

 

 

で、思ったんですけど、このゴールを一番許せないのは、制限従属性説を広義の共犯(教唆犯、幇助犯、共同正犯)にあてはめる立場の人らのはずです。

 

制限従属性説とはもともと狭義の共犯(教唆犯、幇助犯)処罰根拠を正犯に違法な行為を行わせたことに求める説(のはず)なんで、正犯が違法性阻却されると狭義の共犯も不可罰になる。ここからで出た標語が「違法性は連帯、責任は個別に」(らしい)。

 

で、この標語を共同正犯にまで広げちゃうと【最高裁平成4年6月5日】を絶対に許せなくなるはず。だって、違法性阻却されたら、連帯して他の人も阻却されんとおかしいから。

で、この判例が出た事案の被告人の弁護士が主張したのは、まさにこの主張だったわけです。(判決結論部分は後掲します)

 

まあ、そもそもなんで共同正犯にまで広げちまうんだ、ってのが私の感覚です。

狭義の共犯従属性はまだわかるんです、教唆犯と幇助犯の条文の文言が正犯を要求してそうに読めるから。で、趣旨を推察するに、「自己の犯罪を実行する」正犯の周辺にも罰すべき連中がいるから、その限度で処罰範囲を拡張する。だから、その成立要件を正犯のなんかしらに依存するのはわかる。

けど、60条てそんな読み方できる?と思います。

共同正犯の誰かの成立が他の誰かに依存するような書きぶりではないような…と思うのです。

まあ、それはともかく。

 

で、そもそも、狭義の共犯の処罰根拠からして犯罪実現までの因果性を正犯を介して間接的に惹起したという因果的共犯論に立てば、この辺は基本的にスルーできるはずですよね、処罰根拠が正犯の違法性じゃないんだから。たぶん。きっと。

 

ともかく、制限従属性説を広義の共犯にあてはめる立場の人をはじめとして、【最高裁平成4年6月5日】を許せない人にちょっとは許してもらえるような規範にしないといかんと思ったのです。

 

で、その人らの立場に立って、共同正犯には違法性の連帯させるのが原則であると考えてみます。

すると、この判例の処理は例外ってことになる。

となれば、少なくとも例外を認める必要性がなきゃいかん。

で、今回は共同正犯の話だから、なんかしら共同正犯の特徴に引き寄せりゃ必要性が導けるんではないか?

 

共同正犯の特徴てなんだ。

一部実行全部責任?

んんんんんん

うん、要は実行行為の分担やな、と思いました。

共謀共同正犯にしたって、要は片方が片方に100%実行行為を分担してる話だよな、と。

この辺になんか共同正犯の特殊性ないかなと思って、しばし悩んだら「あ、これって共同正犯の行為は一人一人違うってことよね」と思った時に「あれ?第5問の規範の路線でいけばいいのでは?」と閃きました。

 

その規範の元の判例がこちら。【最高裁平成29年4月26日】

行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。

 

で、私なりに縮めたのがこちら。

「36条の趣旨は、緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容することにある。そこで、行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして、かかる趣旨をもっても許容できない対抗行為は急迫性の要件を満たさないと考える。」

 

で、それって、こういうことなんじゃねーの?って、上記答案でも書いたのがこちらです。乙が予期していた事情から問題提起をした解答作成上の都合上、予期の強調してるのと「行為に先行する事情を含めた行為全般の状況」を「当該対抗行為を取り巻く全ての事情」に言い換えました。

「そもそも36条の趣旨は、違法な法益侵害にさらされた緊急状況下で公的機関の保護を期待できない場合において、私人による対抗行為を例外的に許容した点にある。(よって、侵害を予期したものにその回避を義務付ける趣旨ではないから、予期しただけでは急迫性の要件に当然に該当しないとはいえない)しかし、当該対抗行為を取り巻く全ての事情に照らして、36条の趣旨によっても許容できない行為は、急迫性の要件を充たさないと考える。」

 

で、思ったんですけど、この判例の一番の特徴は行為全般の状況を考慮要素として評価することですよね。判例で列挙されたのは、こちら。

 

①行為者と相手方との従前の関係

②予期された侵害の内容

③侵害の予期の程度

④侵害回避の容易性

⑤侵害場所に出向く必要性

⑥侵害場所にとどまる相当性

⑦対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等)

⑧実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同

⑨行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容

⑩等

 

積極的加害意思もその数ある考慮要素の一つ(ちなみに私は積極的加害意思を『その際の意思内容』に読み込みました。工藤先生は『等』かな?たしか)に過ぎないのだ、と。(でも、積極的加害意思はめっちゃ大きな指標にはなると思います。相対化されてもなおデカい。太陽系の中の木星って感じ。なに、その例え)

 

で、前述の通り、共同正犯はそもそも行為を分担する犯罪容態に特徴があるから、その結果として共同犯罪の参加者がそれぞれ違うことをする(せーの!で人を刺したりしない)って特殊性があると私は思いました。私はですよ。

 

てことは、それぞれの「行為全般の状況」は各自で変わりうる。

てことは、急迫性の構成要件該当性は各自で変わりうる。

てことは?てことは?

 

急迫性(正当防衛)の要件該当性は個別に判断する!!!!!!

ていうか、せざるを得ないよね!!!!!!

 

という【最高裁平成4年6月5日】の結論を導けたと(自分では)思いましたがどうなんでしょう?

 

で、上の答案では第1と第2にばらけてますが、このような過程を経て、私が考えた規範がこちらです。

「そもそも36条の趣旨は、違法な法益侵害にさらされた緊急状況下で公的機関の保護を期待できない場合において、私人による対抗行為を例外的に許容した点にある。よって、侵害を予期したものにその回避を義務付ける趣旨ではないから、予期しただけでは急迫性の要件に当然に該当しないとはいえない。しかし、当該対抗行為を取り巻く全ての事情に照らして、36条の趣旨によっても許容できない行為は、急迫性の要件を充たさないと考える。そして、共同正犯の場合においては各自が別個の行為に及ぶのが通常であるから、それぞれの行為を取り巻く事情も別個のものであると考えられる。よって、急迫性の要件該当性は行為者ごと個別に判断すべきである。」

 

長い!!!

 

てことで、縮めると

「36条の趣旨は、公的保護が期待できない中での違法侵害に対する私的対抗行為の例外的許容にあるから、当該行為の急迫要件該当性は、行為全般の事情に照らして、かかる趣旨に妥当するかの観点から検討すべきである。特に共同正犯の場合は、各自が別個の行為に及ぶのが通常であるから、行為全般の事情も行為者(共同正犯者)各人ごとに異なりうる。よって、急迫性の要件該当性は行為者(共同正犯者)個別に判断すべきである」

ぐらいでしょうか。論パっぽーい。笑

もっと削れるかもですが、理屈を失わないレベルだとこの辺なのかなーと思いました。

 

で、最後に【最高裁平成4年6月5日】の判旨結論部分を抜粋します。

 

所論は、Aに過剰防衛が成立する以上、その効果は共同正犯者
である被告人にも及び、被告人についても過剰防衛が成立する旨を主張する。
 しかし、共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否は、共同正犯者の各人 につきそれぞれその要件を満たすかどうかを検討して決するべきであって、共同正犯者の一人について過剰防衛が成立したとしても、その結果当然に他の共同正犯者についても過剰防衛が成立することになるものではない。原判決の認定によると、被告人は、Cの攻撃を予期し、その機会を利用してAをして包丁でCに攻撃を加えさせようとしていたもので、積極的な加害の意思で侵害に臨んだものであるから、CのAに対する暴行は、積極的な加害の意思がなかったAにとっては急迫不正の侵害であるとしても、被告人にとっては急迫性を欠くものであって、Aについて過剰防衛の成立を認め、被告人についてこれを認めなかった原判断は、正当として是認することができる。

 今更ですが、⑴行為者(共同正犯者)ごとに正当防衛を検討している⑵(少なくとも、この事例は)急迫性で検討してるっぽい、て感じなので、ぼちぼち親和性がある規範を立てられたんじゃないかと思ってます。

でも、これから急迫性だけじゃなくて防衛の意思まで拡張されうる(というか完璧な主観要件だから、客観要素が混ざる急迫性より各自判断に馴染むんでは?)だろうし、緊急避難とかはどうなんねんとかは当然あるんでしょうね、きっと。学説の動向は何も知りませんが。

 

うーん、判例法理をこんなにしっかり考えたのは初めての経験です。考える方向があってるのかはわかりませんが。

全部の判例は無理でも、たまにはいいんでしょうね。

 

とか言いつつ、こんなん晒して致命的な欠陥があると恥ずかしいのですが。笑

まあ、ただ数年前に挫折してから、ちゃんと法律を勉強し直したのがここ1週間とかなんで、なんかしら間違えてる蓋然性の方が高いわけで。

それにそんなレベルだから、行為無価値と結果無価値の違いも良くわかってないもんで、自分が書いた規範が学説を背景にした人が見て、どんだけやばいかは自分ではわかりません。

というか、自分の中に漠然とある刑法観が行為無価値と結果無価値のどちらにより親和的かすら自覚的でありません。笑

だから、まあだいぶ恥ずかしいことを書いてる可能性は高いと踏んでます。

まあ、その恥ずかしさもこのブログのメリット(ダメ出ししてもらうのが目的)なんで、いつか誰かに読まれるかもな時のために残しときます。

 

以上です。

 

 

このブログ記事へのご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害しまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第9問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

強盗の実行着手前の共犯の離脱の問題でした。

 

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

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【私の答案】

第1、乙の罪責

1、丙・丁がA宅で押し入り現金を奪った行為は強盗罪(236条1項)が成立する。丙らにA宅に押し入り強盗する話を持ちかけ、丙らとともに計画を立てた乙の行為につき、同罪の共同正犯(60条)が成立しないか。

⑴もっとも、乙は犯行当日の朝になり高熱を発したため、実際の強盗行為には参加していない。かかる場合においても、乙は丙らと「共同して犯罪を実行した」」(60条)と言い得るか。

ア)共同正犯の処罰根拠は、構成要件該当事実の実現に至る因果性を共同で惹起した点にある。かかる因果性の惹起は実際の実行がなくても可能であるから、自己の犯罪を実現する正犯意思と、共同性を根拠づける意思連絡とが認められれば、「共同して犯罪を実行した」といえる。

イ)乙は強盗に使用するナイフは各自で準備しようと持ちかけており、丙らのナイフを積極的に用意したわけではないが、多額の保険金を得たA宅に現金があることを丙らに知らせ、それを強取する計画を三人で立てたのであるから、本件計画に不可欠な役割を果たしている。そしてもし実行に参加し現金を奪っていたのなら、その一部を自己のものにしていただろうことは容易に考えられる。よって、乙には正犯意思が認められる。

そして、計画を丙らと共有しており、丙らとの意思連絡があったことは明らかである。

ウ)よって、乙は丙らと「共同して犯罪を実行した」と言い得る。

⑵しかし、乙と丙らの共犯関係が肯定できたとしても、乙は上記強盗行為が実行される前の時点で、「俺はこの件から手を引く」と丙らに申し向け、両名の了承を得ていた。この事実をもって、乙が丙らとの共犯関係から離脱したと言えないか。

共犯からの離脱の有無の判断基準が問題となる。

ア)前述のように、共同正犯の処罰根拠は、犯罪実現に至る因果性の共同惹起にある。そうだとすれば、共犯関係からの離脱はかかる心理的・物理的因果性を除去したか否かで判断すべきである。

イ)まず、一緒に強盗すると丙らに伝えたことでより高められたと思われる丙らの実行意欲という心理的因果性は、乙の不参加表明と丙らの承諾で除去されたと言える。そして、乙は確かに強盗の話を持ちかけ丙らの犯行意欲という心理的因果性をそもそも惹起したのは間違いないが、その後の経過をみると丙らと三人で計画を立てており、少なくとも実行の着手の手前では、乙が殊更に計画を主導統制した中心人物であったとまでは言えず、かかる心理的因果性も前記した表明と承諾をもって除去されたと言える。そして、計画では、ナイフは各自で準備するとしていたので、物理的因果性はそもそもない。

ウ)よって、乙は丙らとの共犯関係から実行の着手前に離脱したと言える。

⑶したがって、甲の行為につき、本罪は成立しない。

2、では、強盗罪の教唆犯(61条1項)が成立しないか。

⑴確かに乙が丙らに強盗を持ちかけた行為は丙らに犯意を惹起させ、丙らはその犯意によって本件強盗を実行したので、同罪の客観的構成要件に該当する。しかし、上記のように乙は明らかに事故の犯罪を実現する正犯意思を有しているのであり、2次的責任類型である教唆犯の主観的構成要件を欠くといえる。

⑵よって、同罪は成立しない。

3、もっとも乙が強盗のためにナイフを用意し、丙らと具体的な計画を立てた行為は本件強盗の準備行為であるから、強盗予備罪(237条)の構成要件に該当し、同罪が成立する。よって、乙はその罪責を負う。

第2、甲の罪責

1、甲が乙にナイフを貸した行為につき、強盗罪の幇助罪(62条)は成立するか。

⑴狭義の共犯の処罰根拠は、構成要件該当事実の実現に至る因果性を、正犯を介して間接的に惹起した点にある。よって、正犯なくして幇助犯は成立しえない。

⑵本件では乙に強盗罪が成立せず本罪の正犯を欠くので、同罪は成立しない。

2、では、甲の同行為に強盗予備罪の幇助は成立するか。

⑴前述の狭義の共犯の処罰根拠に照らせば、乙に強盗予備罪が成立している以上、本罪の正犯は欠いてなく、また「強盗に使うのでナイフを貸してくれ」と言われているから、強盗予備罪の幇助の故意に欠けるところはない。

⑵よって、本罪は成立し、甲はその罪責を追う。

以上

 

【感想】

今朝書いた前記事で共犯がわからん、なんにもわからんと泣き言を言っていたわけですが。笑

 

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 その後、腰を据えて、先入観を排して、大げさに言えば虚心に山口厚先生の『刑法(第3版)」の共犯のところを読みました。

わかったのかはわかりませんが、それでも共犯論の問題意識ぐらいはわかってきたのようなきてないようなそんな気はします。

ですから、前の問題よりは(間違ってるかもですが)自分なりの理解を前提に迷いなく書けました。

 

①実行行為を欠く共同正犯(共謀共同正犯)

という問題意識で書きました。

まあ、内実が変わるわけではないのでしょうが。

ただ工藤先生の解説にもあるように、分量的にはもっと抑えたほうがよかったと思ってます。乙の共同正犯性が問題になる事例では確かになかったかも。

メインはあくまで共犯の離脱でしょうから、サクサク処理して良かったんだと思います。

 

②共犯の離脱

前記事でボヤいてた共犯の因果性?因果的共犯論?の意味というかイメージがやっと少しずつ出てきたように思います。

ここの処理については『判例ラクティス刑法Ⅰ 総論』355Pの安田拓人先生の「概観解説 共同正犯論」での記述が大変参考になりました。

 

それを参考に、あえて(学説?判例も?否定している)形式的な整理をすると

 

⑴実行の着手前の離脱の要件

原則:(明示・黙示の)離脱の意思表示と了承で足りる【東京高裁昭和25年9月14日】

例外:離脱者が犯罪の指示命令をした中心的人物の場合は、共謀以前の状態に戻す必要がある【松江地裁昭和51年11月2日】

⑵実行の着手後の離脱の要件

他の共犯者の犯罪継続のおそれを消滅させる積極的措置【最高裁平成元年6月26日】

 

ということなんだと思います。

ただ、これはあくまで形式的なパターン処理にすぎず、離脱者が惹起した構成要件該当事実の実現への因果性を除去したかを事情に照らして、実質的に検討するのが筋なんだと思います。

じゃあなんで、上みたいな実行の着手の前後で分かれる定型化が起こるのかと言えば、結果発生の現実的危険性を作るのがまさに「実行の着手」(43条本文)に他ならないからのだと理解しました。

この問題集が第4問で扱っていた「実行の着手」の有無の話と全く同じ価値観がここで妥当するのに気づいて感動しました。気づいたら当たり前なんでしょうけど。笑

ただ、単独犯のはぼちぼち書けるけど共犯は全然書けなかった私にすると、単独犯と共犯は全く違う価値観で動いている(共犯が修正された構成要件だから、そういう側面もあるんですが)とどこか勘違いをしてました。

じゃないんかい!ていう感動をしたので書いときたかったのでした。笑

 

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だから、これから私がこの論点を書く際に気をつけたいのは、上記の形式的なパターン処理は頭の中にとりあえずもっといて、けども記述としては因果性の除去にフォーカスをあてて有無を心理的因果性・物理的因果性を実質的に検討していくべきなのかな、と思ってます。

というか、【松江地裁昭和51年11月2日】はそういう考え方から出てきたんでしょうし。

 

で、その松江地裁の判断から照らすと、今回の乙さんて、話を持ちかけたから中心人物なんじゃねーの?という迷いが出てくるので、そこを意識したあてはめをしたのでした。

松江地裁では暴力団の親分かなんかが子分に師事出して、途中で帰ってこいっていったけど、子分がそのまま続けたみたいな話なんで、そりゃ計画を支配統制できる中心的人物でしょうね、と思うですが。

この乙さんがそれと同列かなー?て感じで書きました。

工藤先生の解答例もそういう感じでした。

 

これ、評価次第では中心人物になっちゃうんですかね。

だとしたら、なかなか頑張らなきゃいけないんですよね、乙さん。

熱出してるのにね。

強盗なんか人に持ちかけるもんじゃないですね。

 

③共犯から離脱した者の教唆犯の成立可能性

こんな論点あるのですな。

今回、山口先生の本を熟読してギアが上がってる状態で臨んで、「あれ?これ、教唆が成立するんでは?」と思って書きました。

で、解説読んだら小さく触れられてたので、自分の問題意識がそんな的外れじゃなくて良かったと思うと同時に、『実況論文講義』やっぱ凄いな、と思いました。

でも、工藤先生の解答例にも予備試験合格者の解答例にも触れられてないんで、書かないほうがよかったのですかね。

私はこう結論づけたけど、どうなんでしょう。

狭義の共犯と共同正犯が同時に成立しうるもんなんでしょうか。

「自分の犯罪を実現する」正犯意思と「他人の犯罪を実現する」故意が併存しても良いって考えに立てば、理屈の上では筋が通るんでしょうが…

どうも私にはピンときませんね。

 

④正犯なき(狭義の)共犯

これはねー、論点に飛びついちゃいましたよねー。笑

直前に山口厚先生の本を読んで見た論点だったので、事情を見て反射的に甲を幇助犯と考えてしまいました。

まあ、強盗罪に関してはそれもありなのかもですが、そこにひきづられた結果、予備罪の共同正犯の論点を落としてしまったのでした。

正犯可能性→(狭義の)共犯の可能性と検討する意識を持たないといけないな、と反省。

けど、それに気づけたのでやってよかったミスでした。

 

⑤予備の共同正犯

こんな論点もあるんですな。

でも工藤先生の解説曰く百選に載ってるレベルの有名判例らしいので書かないわけには行きますまい。

で、『判例ラクティス』を読んでみました。(昔の百選は捨てちゃって、今は判プラしかないのです)

 

事案としては、被告人Xは、YがZを殺害するから毒物を調達してくれと頼まれて、調達したけど、結果的にYは別の方法でZを殺したんだそうです。

 

で、検察はXを殺人予備罪の共同正犯、予備的訴因(メインがダメな時はこっちの検討お願いします的な起訴。確か。笑)として殺人予備罪の幇助犯で起訴。

 

その後、裁判は1審と2審の判断が割れる激しい過程を辿ったのですね。

1審は他人予備(他人がやる犯罪の予備罪の正犯。多分。笑)は認めず、予備的訴因の殺人予備罪の幇助犯という構成を採用した。

2審は予備的訴因の殺人予備罪の幇助犯の構成を否定して、他人予備として殺人予備罪の共同正犯という構成を採用した。

で、被告人側が上告。

さて、最高裁の判断は?となって、上告棄却。つまり、高裁の構成を是とした。

つまり、①予備罪の共同正犯、②他人予備の共同正犯という構成を認めたのだと。

 

この時、高裁が殺人予備罪の幇助犯を否定した理由が振るっていて「予備罪と幇助犯は両方、修正された構成要件でしかもそれぞれ『無定型、無限定』なんだから、それを一緒に適用したら、処罰範囲がめちゃくちゃ拡張されるわい」というものでした。

 

これは多分こういうことです。

 

今日、山口先生の本を読んで知ったのですが、広義の共犯は全て基本的構成要件(単独犯や既遂犯などシンプルでわかりやすい構成要件)の処罰拡張規定なんだと。

例えば、強盗の二人組の実行共同正犯なんかは片方が被害者を縛って片方がタンスを漁ってなんてして犯罪を実現するけど、単独犯しか想定できないなら、被害者を縛った方は暴行罪(かな?監禁?笑)しか成立しないで、タンス漁った方は窃盗しか成立しない。

共犯なんて、なんなら単独犯より犯罪実現の危険があるのに、これじゃまずいってんで、基本的構成要件の処罰範囲を拡張したんが共犯規定だと。

で、幇助犯はそこに入る。

 

で、未遂犯、予備罪も処罰拡張規定です。

原則、犯罪は既遂(結果が発生する)までいかないと罰せられないけど、その中でももっと危険な犯罪は結果発生の現実的危険が発生した(実行の着手)時点で罰する(未遂罪)し、もっともっと危険な犯罪は現実的危険性が発生してなくても準備した段階で罰する(予備罪)と。

 

・未遂犯がない犯罪は横領罪とか。(今調べて初めて知ったが)

・未遂犯があるけど予備罪がないのは窃盗罪とか。

・予備罪がある横綱危険犯罪は殺人罪、強盗罪、放火罪、内乱罪などなど超怖い犯罪群の中で通貨偽造罪見てほっこり。でも確かにね、社会的影響エグいもんね。

 

何が言いたいかっていうと、既遂・単独犯を原則におく刑法典の中では、共犯も未遂罪も予備罪も例外だってことです。

そんな例外的な処罰拡張規定をホイホイ気軽に合わせ技で適用したら著しく処罰範囲が広がって、国民の自由の保障が出来なくなっちゃうよ、ってのが高裁の持った危機感です。きっと。

 

だからこの判決書いた高裁の裁判官が、上で晒したホイホイ認めてる俺の答案見たらめっちゃ怒るんでしょうね、きっと。近づかないようにしよう。

いや、でも本当に目から鱗でした。膝打ちましたね。

 

と思っていたら、「ん?それは共同正犯もなのでは?」と思い、ギブアップして工藤先生の解答例を確認したら、高裁が幇助行為を表現した「無定型」て文言を意識した論証をされてました。

幇助犯と共同正犯の違いは「無定型」かどうかということですかね。

なるほど、わからん。

 

で、その後、共犯と身分というところに議論が流れて、そこまで基本書を読んでない私の理解を超えてしまいました。笑

ということで、次の問題を解きます。笑

 

それにしても気づきの多い問題でした。

山口厚先生の本を熟読したのもあって、少しだけ成長したかもと思えたのでした。

 

え、5735文字?

自分が書いた文章の異常な長さにドン引きしたので、この辺で。

 

 

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害してしまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第8問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

 最高裁平成13年10月25日を素材にした問題でした。

 

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

【私の答案】

第1、間接正犯の成否

1、甲女がAを利用してVより現金40万円を強取した行為は、強盗罪(236条1項)の間接正犯にあたらないか。間接正犯の成否、その成立要件は明文がないため問題となる。

2、正犯とは自己の犯罪を実現する第1次責任類型である。となれば、直接手を下さなくても、被利用者を介して因果的経過を実質的に支配し、自己の犯罪を実現することは可能だから、間接正犯は認めて良い。

よって、被利用者への行為支配性と自己の犯罪を実現する正犯意思が認められれば、間接正犯は成立する。

3、たしかに甲女は被利用者Aの母親である。しかし、Aが12歳であることからすると、母親の全て言う通りに行動するとは一般的に考え難い。事実Aは当初は計画実行を嫌がり、甲女が説得した後、受け入れたのである。さらに犯行現場では、覆面を被りナイフを見せてVから現金を強取すると言う甲女に指示された計画に単に従ったのではなく、Vをトイレに入るよう申し向けるなど、強取計画遂行が容易になるよう臨機応変に行動している。

かかる事情からすると、甲女のAに対する行為支配性は認められず、間接正犯は成立しない。

第2、共同正犯(60条)の成否

1、では、甲女につき、同罪の共同正犯が成立しないか。

本件では、甲女は実際に犯行現場におもむき、Aと犯行を分担したわけではない。かかる場合でも共同正犯は成立するか。

2、共同正犯の本質とは相互利用補充関係に基づく構成要件の実現にある。そして実際に実行行為を分担していなくても、相互利用補充関係の形成とそこに基づく構成要件の実現は可能である。よって、相互利用補充関係を基礎付ける意思連絡と、自己の犯罪を実現したといえる正犯意思とが認められれば、共同正犯は成立する。

3、甲女はAに本件計画を指示しており意思連絡は認められる。

次に正犯意思について検討する。まず、甲女は生活費に困っており、自己のために本件強盗計画を立てた。そして、甲女は12歳のAの母親であり、Aの行為を支配していたとは言えないまでも優越的な立場にあった。かかる優越的な立場のもとで、甲女は計画を指示し、実行を嫌がるAを説得しており、本件犯行を主導している。そして、犯行を容易・確実にする覆面用ビニール及びサバイバルナイフを自ら用意してAに渡すなど、計画実現に不可欠な役割を自主的に果たしている。そして何よりもAが奪った40万円を自己の生活費として費消しており、本件強盗の利益を自己のものしている。

これらの事情を考えると、甲女には本件強盗を自己の犯罪として実現したと十分に認められる正犯意思が認められる。

4、よって、甲女の行為は強盗罪の共同正犯の構成要件に該当する。

5、しかし、Aは12歳であり責任能力を有さない。(41条)

⑴そこで、共犯者の一部に責任阻却事由がある場合、他の共犯者の罪責に影響を及ぼすか。共犯における有責性の有無の判断方法が問題となる。

⑵責任の本質は非難可能性にあるから、その有無は個別に判断すべきである。

⑶よって、甲女の責任はAとは別個で判断され、その責任に欠けるところはないから、甲女の行為には同罪が成立、甲女はその罪責を負う。

以上

 

【感想】

①共犯全般

共犯がしんどい。笑

共犯理論があまりに理解できてないので、規範をもうぐちゃぐちゃと直しまして。

工藤先生と予備試験合格者の解答例を読んでも理解ができず。

『基本刑法』読んでも山口先生の青い『刑法』読んでも混乱が増すばかり。

判例読んでも処理はわかるが理屈は「んん?」となり。

ネットで調べても「んん?」となり。

完全にドツボにハマってました。抜けてないけど。

 

それでかなり前に人からもらった伊藤塾の呉先生の『刑法総論(第2版)』を引っ張り出して説明読んだら、やっと共犯論に入門できました。

とはいえ、もちろん十分理解できたわけではないから、息も絶え絶えで答案書いた次第です。

 

前に勉強してた頃はこんなにつまづかなかった気がするんですがなー

承継的共犯とかトントン処理してた気が。

たぶんわかってる気になってただけなんだと思う。

 

あ、で、呉先生の『刑法総論(第2版)』説明は超わかりやすい。

ただ、私が持ってる版は10年近く前のなんで色々古そうですが。

 

 

さて、共犯について色々、読んだんですけど、私の理解の今の状況は…

 

今読んでる(判例や基本書の)記述の問題意識がどの水準での話なのか(広義の共犯の話なのか、狭義の共犯の話なのか、とか)から、一見するとよくわからん。

いわば知識を入れる引き出しからガタガタの状態で、従属性やら共犯の本質やら処罰根拠やらの問題意識が押し寄せてきて、それぞれにいろんな学説があって(その辺読んでる時点で頭が散らかってくる、というか頭から煙が…)、その辺の基本的な理解を前提に片面的共同正犯とか承継的共犯とかイレギュラーな事案への問題意識が出てくる?

 

ぐらいのもんでやばいっす。笑

とりあえずは問題ごと、判例ごとの処理を理解していく対症療法に努めます。

が、最低限の理論的な背景を作らないと、早晩限界がきそうです。というか、そうしないと処理を論文に再現できない。笑

どうしようか。

なんか初学者でもわかるレベルで共犯論の基礎的な理論体系が整理されてる本とかないもんですかね。

 

と思ってググってたら、島田総一郎先生の『正犯・共犯論の基礎理論』という本に行き当たり、「お!」と思って商品ページに行ったら定価8800円でした…

絶対俺の思ってる基礎じゃないよね、これ笑

 

で、うーーーーん、となり。

それで思いついたのが、会社法と民訴の導入にすごく助かった『有斐閣ストゥディア』シリーズ。

ありましたよ、『有斐閣ストゥディア 刑法総論』!

すぐポチりましたよね。早かった、あのポチりは早かったよ。

だから早く届かないかな。

 

まあ、上に示したのは、そんなレベルで書いた答案てことなのです。

ね、ヘボいでしょ?

 

②間接正犯

これは実行行為の事実上の分類にすぎないんだぜ、っていう山口先生の『刑法(第3版)』の説明がスッと入ってきました。

だから、淡々と処理できたんですよね。

 

②共同正犯の成立要件

ここですよね、問題は。

あ、『工藤北斗の論文実況中継』の名誉のために述べますが、規範は私が書いたのとは全然違いますんでね。

たぶん俺、共犯の因果性が理解できてないんだな、と思います。

書けば書くほど混乱しそうなので、一旦スルーしとこう。笑

 

以上です。

 

 

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害しまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

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『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第7問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

誤想(過剰)防衛の事例でした。

 

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

【私の答案】

1、甲が乙の腹部を登山ナイフで刺した行為につき、殺人未遂罪(199条、203条)の成否を検討する。

2、構成要件該当性

⑴甲の上記行為は同罪の客観的構成要件に該当する。そして、甲は殺意をもって、かかる行為に及んでいるので故意も認められる。

⑵よって、甲の行為は同罪の構成要件に該当する。

3、違法性阻却事由の有無

⑴乙が甲の前に立ちふさがったのは、甲を友人丙と勘違いして驚かそうとしたに過ぎず、よって乙の甲に対する「急迫不正の侵害」(36条1項)は存在しない。

⑵よって正当防衛は成立しないので、違法性阻却事由はない。

4、責任阻却事由の有無

⑴しかし、甲は対立抗争中の暴力団組員が自身を襲ってきたと思い込んで、自らの身を守るために上記行為に及んでいる。つまり、甲の主観をして、違法性阻却事由である正当防衛が成立しうると誤信していた。

このように違法性阻却事由があると錯誤したことをもって、故意責任は阻却されないか。

⑵故意責任の本質は、反対動機が形成され得たにも関わらず、あえて規範に反しした人格態度への道義的非難である。そうであれば、違法性阻却事由があると錯誤した場合、そもそも反対動機が形成されないので、かかる非難可能性は認められない。よって、行為者の主観を基準に違法性阻却事由が認められれば、故意責任は阻却されると考える。

⑶甲の主観を基準に正当防衛(36条1項)が成立するか検討する。

ア)「急迫」

甲は対立抗争中の暴力団に襲われることを予期して護身用のナイフを携行しているので、「急迫」性を失わないか。

36条の趣旨は緊急状況下で公的機関の保護を得られない中、違法な法益侵害に私人が対抗することを例外的に許容したものである。よって、侵害を予期したものにその回避を義務づける趣旨ではなく、予期しただけでは急迫性は失われない。しかし、対抗行為を取り巻く全事情に照らして検討して、かかる趣旨にそぐわない行為には急迫性は認められない。

たしかに、甲は自身への襲撃を予期しているのみならず、ナイフを携行するという予期される法益侵害への一定程度の準備には及んでいる。しかし、そのナイフを持って侵害が予期されるこの機会に積極的に対立暴力団組員を加害しようという意思まではない。さらに自身への襲撃に関する予期の程度は漠然としたものにすぎず、この時点では警察に保護を求める状況にもない。よって、その甲が襲われたと認識し、対抗した上記行為にはなお急迫性が認められる。

イ)「不正の侵害」

甲は乙が自身に殴りかかってくると誤信しており、甲の主観をして「不正の侵害」は認められる。

ウ)「防衛するため」

甲は乙に対して逆上しているが、かかる場合に防衛の意思は認められるか。

正当防衛に求められる防衛の意思は単に法益侵害に対応する意思で足り、かつもっぱら攻撃的意思にもとづいて対抗していない限りは、防衛の意思は認められる。

甲は、逆上して攻撃的意思を有して上記行為に及んでいるが、危険を感じて単に対立組員による法益侵害に対応する意思も併存している。よって、甲の主観をして、防衛の意思は認められる。

エ)「やむをえずした行為」

上記行為に相当性は認められるか。

正当防衛行為には、補充性も厳格な法益バランスも求められず、法益侵害から防衛するための必要最小限であれば、相当性は認められる。

たしかに事件が発生したのは薄暗い夜道であり、他者の助けが期待できない状況であった可能性は高いが、乙は甲が視認できる前に回り込んで右手を振り上げたにすぎない。そして、乙が素手であり一人であることを考えれば、甲がそれにナイフをもって対抗し、相手や状況を確認もせずに即座に乙を刺した行為は明らかに自身を守るために必要最小限の行為とは言えず、相当性は認められない。

オ)よって、甲の主観を基準にしてもなお上記行為には正当防衛が成立せず、甲の故意責任は阻却されない。

5、よって、甲の上記行為には殺人未遂罪が成立し、こうはその罪責を負う。

6、なお、甲の主観をして、上記行為は行為の相当性を欠いたにすぎないので、過剰防衛(36条2項)が成立し、甲の刑は減免されうる。

以上

 

【感想】

新規論点は、誤想防衛における故意の阻却と最後の36条2項についてです。

 

他は違法レベルで論ずるか責任レベルで論じるかの違いはあれど、既に第5問、第6問で扱った論点でいい復習になりました。(上手く書けた訳ではない)

 

36条2項については軽く流しちゃったけど、その趣旨まで遡って結構丁寧に論じないといけなかったくさい。

たしかに誤想防衛は典型的な適用場面ではないのか、と納得。

過失犯の成立可能性があるのでその均衡で免除はないってのはなるほどと思いました。

となると仮に誤想防衛がした場合は、殺人未遂罪不成立→(故意責任が阻却されるにすぎないから?)過失致死は検討可能→成立、みたいな流れになるんでしょうかね。

 

 

この問題は前2問の復習問題の性格もあったと思います。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

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 というわけで、自分なりの練習として論点ごとの記述量のバランスを考えてみました。

個人的には、予期→「急迫」、逆上→防衛の意思、ナイフで素手の相手を刺した→行為の相当性となっていて、正当防衛のどの段階にも満遍なく事実が振られているように問題を読みました。

なので答案構成段階ではそれぞれ同じくらいの分量で論じよう(だから、一つ一つの論点はコンパクトにしよう)と思い書き始めました。

論理を壊さずコンパクトにするのはなかなか難しいですが、これも練習あるのみなんでしょう。

 

工藤先生の解説では、防衛の意思を他より厚めにとのことでしたから、この辺の見極めはもっと頑張らなきゃですね。

ただ、「急迫」性に関する平成29年4月26日の判例に照らすと、やっぱりナイフを携行していた事情は、判例で挙げられた「対抗行為の準備の状況(特に凶器の準備の有無や準備して凶器の性状等)」という考慮要素に引きつけて書きたいと思いました。

 

あ、それと急迫性の検討で、対立抗争中に薄暗い夜道を一人で歩くなよってツッコミは思いついたんですね。

けど、「予期した侵害を回避する義務を求める趣旨じゃないし」「すごい危険な場所に飛び込んだとまでは言えないし」とか考えると、当てはめる過程での扱い方がちょっとややこしくなる感じがしたのでスルーしました。

どちらにしろすごく大きな事実ではない気もしましたし。

 

それと私は「甲の主観においては」って書いてるけど、工藤先生の解答例みたく認識と書いた方がよかった気がします。

故意責任の話してるから構成要件事実の認識・認容という意義に引きつけて書くのが良いのかな、と。

多分通じるとは思うのですが、勉強し始めの今は言葉の使い方もこだわりたいのです。

 

全体を通してみると、スピード感とコンパクト感を重視した結果、安定した答案が書けなかったかもと反省しとります。まあ、今まで書いたのが安定してたかは別論ですが。

以上です。

 

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害しまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

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『工藤北斗の実況論文講義 民事訴訟法』第1問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

民法上の組合を当事者とする訴訟追行可能性、①業務執行組合員を当事者とする訴訟追行可能性を問う事例でした。

 

なぜ、ざっくりなのかはこちら。

 

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【私の答案】

第1、甲組合が当事者として訴訟追行することの可否

1、甲の当事者能力について

⑴甲が当事者として訴訟追行できるためには、まず当事者能力が認められる必要がある。しかし、甲は民法上の組合(民667条)に過ぎず権利能力を有しないので、当事者能力もまた認められないのが原則である。(28条)

⑵では、甲は「法人でない社団」(29条)として、当事者能力を認められないか。「法人でない社団」の意義が問題となる。

⑶29条の趣旨は、独立財産を有して社会活動を行い、私法上の紛争主体となりうるものに当事者能力を認め、もって円滑に紛争解決を図る点にある。となれば、組合独立の財産を「共有」(民668条)し、「共同の事業を営むことを約」(民667条1項)することで社会活動を行う民法上の組合もまた私法上の紛争主体となりうるから、その当事者能力を認める必要性はある。一方で、団体としての一貫性がないものにまで当事者能力を付しても円滑な紛争解決は図れない。そこで、当該民法上の組合が①団体としての組織をそなえ、②多数決の原則が行われ、③構成員が変動しても団体が存続し、④代表の方法、総会の運営、財産管理など団体の主要な点が確立している場合には、これを「法人なき社団」と認めるべきと考える。

⑷本件における甲がこれらの要件を充せば、「法人でない社団」にあたる。

そして、甲はAを業務執行組合員としているから、「代表者の定め」があると言える。(29条)

⑸したがって、甲に当事者能力が認められうる。

2、甲の当事者適格について

⑴当事者能力が認められるとしても、甲が訴訟追行できるためには、さらに当事者適格が認められる必要がある。

しかし、当事者適格は、訴訟物たる実体法上の特定の権利・法律関係についての法的利益の帰属主体に認められるから、実体法上の権利能力を有さない甲には認められないのが原則である。

⑵では、Aらではない第三者の訴訟担当として、甲は訴訟追行し得ないか。

ア)民法上の組合をその組合員の訴訟担当とすべきという明文上の規定はなく法定訴訟担当の構成はとりえない。では、任意的訴訟担当の構成はとりえないか。

イ)前述のように甲が当事者適格の前提となる当事者能力を得るためには、「法人でない社団」(29条)に該当する必要がある。よって、この場合に甲は法定されてる任意的訴訟担当である選定当事者(30条)とはなりえない。

ウ)では、任意的訴訟担当者は選定当事者以外どこまで認められるか。

エ)選定当事者は授権に基づく任意的訴訟担当が許される原則的な場合であるから、これ以外の任意的訴訟担当が全く許されないとは考えられない。しかし、これを無制限に許せば、法が訴訟代理人を弁護士に限定し(弁護士代理の原則、54条)、訴訟信託を禁止したこと(信託10条)で本来の権利義務の帰属主体を保護し、かつ円滑な訴訟進行を図る趣旨を害しかねない。そこで、当該任意訴訟担当への授権が、これらの規定の趣旨を回避・潜脱する恐れがなく、かつ合理的必要があると認められる場合は、かかる授権を認めて良いと考える。

オ)甲組合は三人という少数であり、実質的には本来の権利義務の帰属主体であるAらと同視できるので、かかる授権によってAらの保護が欠けることは考えがたい。その他の事情は明らかではないが、甲を訴訟担当とすることが円滑な訴訟進行を妨げず、かつそうする合理的必要が認められれば、甲は任意的訴訟担当者と認められうる。

3、結論

よって、甲組合は当事者として訴訟追行しうる。

第2、Aが当事者として訴訟追行することの可否

1、Aの当事者能力について

Aは自然人であるから権利能力を有し、よって当事者能力は認められる。(28条)

2、Aの当事者適格について

⑴AはAらの法定訴訟担当にあたらない。

では、Aは任意的訴訟担当として当事者適格を認められるか。

⑵まず、甲が「法人でない社団」(29条)として認められない場合、Aら三人は共有する乙不動産の所有権を確認する「共同の利益を有する多数の者」と言えるから、「その中から」Aら「全員のために原告」としてAを「選定できる」。(30条)よって、Aは選定当事者として当事者適格が認められ訴訟追行ができる。

⑶では、甲が「法人でない社団」(29条)として認められた場合に、AはAらの任意的訴訟担当となり得ないか。

⑷この点、明文はないが、団体員全てが共同して訴訟追行することは必ずしも効率的とは言えず、また相手方の負担も大きいから、「法人でない社団」であっても任意的訴訟担当の必要性は大きい。しかしながら、法が弁護士代理の原則(54条)、訴訟信託の禁止(信託10条)を定めたことに照らすと、これを無制限に認めるべきではない。そこで当該任意訴訟担当を決めることが、これらの規定の趣旨を潜脱・回避する恐れがなく、合理的必要性がある場合は、これを認めるべきと考える。

⑸本件においてこれを見る。Aは業務執行組合員として、B、Cから包括的に授権されている点から、特段の事情がなければ上記要件を充すと考えられるので、任意訴訟担当として当事者適格は認められる。

3、結論

よって、Aは当事者として訴訟追行できる。

以上

 

【感想】

民訴はほとんど勉強してなくて、論文もほぼ書いたことがないので、論文としてのバランスなどは度外視し、用語の定義と条文の構造・文言を大事にしながら、愚直にあてはめました。

けど、やっぱ理解がおいついてない、かつ慣れてないせいか問題提起の仕方や規範の立て方の迷いがある自覚があります。

 

①「法人でない社団」(29条)の意義、民法上の組合の当事者能力

たぶん、ある団体一般が「法人でない団体」として認められるかという場合は

「29条の趣旨は、独立財産を有して社会活動を行い、私法上の紛争主体となりうるものに当事者能力を認め、もって円滑に紛争解決を図る点にある。一方で、団体としての一貫性がないものにまで当事者能力を付しても円滑な紛争解決は図れない。そこで、当該団体が①団体としての組織をそなえ、②多数決の原則が行われ、③構成員が変動しても団体が存続し、④代表の方法、総会の運営、財産管理など団体の主要な点が確立している場合には、これを「法人なき社団」と認めるべきと考える。」

でいい気はするんですよね。

だから答案は特に民法上の組合が「法人でない団体」として認められるかというもう少し狭い範囲に妥当する規範を立てたことになるんだと思います。

事案によりフォーカスした規範を立てるのが正解か、広めの規範を立ててあてはめに注力するのが正解か。

もちろんケースバイケースなんでしょうが、基本的姿勢としてどちらに軸を置くべきかについては、むむむって感じです。

 

②明文なき任意的訴訟担当者

これも規範の立て方に迷いました。

第1ー2ー⑵ーエで立てた規範と第2ー2ー⑷で立てた規範はゴールは全く同じです。

ただ、前者は授権そのもの一般を扱っている一方、後者は多数の人の任意的訴訟担当を一人(数人もか)にする場合の基準を扱っている点で、前者はより広めで普遍的で抽象的な問題意識を扱っていることになるんだと思います。一方、後者はより狭いけど、事例に即しています。(その意味では第1ー2ー⑵ーエのところで組合を訴訟担当にできるかという問題意識をより鮮明に出すパターンもあり得たはず)

両方出てきたのは正直たまたまなんですけど、まあどちらのパターンも書いとくか、てな感じで両方書いたわけです。

 

①でも述べましたが(問題意識レベルと規範レベルなので少し話が違う気もしますが)、スタンスとしてどちらを重視すべきかちょっと迷います。

個人的な趣味嗜好でいうと、前者はより少ない普遍的な理屈でたくさんの個別事例をバサバサ切ってく感じで、ちょっとかっこいい。

覚えることを少なくできるという受験勉強的実益もあります。

けど、これは事案解決としては迂遠な気もするし、裸の比較衡量ではないですけど事案解決がまちまちになりがちにも思えるのです。

俺個人ですら気分によってあてはめ変わりそう。

そして、なにより実務家を目指すならば、そしてその過程で実務家登用試験に受かりたいのならば、事案解決にフォーカスしないでどうする!という声も内から聞こえます。

つか、事案解決に必要な最小限度に抑えた記述ってそれはそれでスマートで美しいと思うんですよね。

だけどなー、一方でより上位の問題意識・規範を考えることは、枝分かれしたより下位の議論を整理・理解するためにも有益な気はします。

てなことで、どちらの価値観も併存する私としては、その階層を意識しつつ、ちょうどいいバランスを限られた時間の中で模索するしかないんだろうと思いました。(なんの話)

この迷いはうっすら無意識にありましたが、期せずして言語化する契機になったので解いてよかったです。(だから、なんの話)

 

あ、答案作成には解答例ももちろん参考にしましたが、『有斐閣ストゥディア 民事訴訟法(第2版)』もめちゃくちゃ参考にしました。

誰でも知ってるような分厚い有名基本書を二冊持ってるんですけど、私はどうもそれを使いこなせるレベルではないようで。

調べても「んん?」てなってモヤモヤするのです。笑

そんな私からするとこの本はめちゃくちゃいいです。

280Pで、初心者の私が調べたいことはなんとなく大体わかります。

大好き。

 

以上です。笑

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害しまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

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『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第6問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

息子に暴行している二人組に父親が鉄パイプを持って止めに入るという典型的な正当防衛の事案です。

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

shitpapers-of-law.hatenablog.com

 

 

【私の感想】

甲の鉄パイプを振り回した行為につき、Cへの暴行罪(208条)、Bへの傷害致死罪(205条)の成否を検討する。

1、構成要件該当性

⑴甲の上記行為は不法な有形力の行使にあたり、Cへの暴行罪の実行行為にあたる。よって、Cへの暴行罪の客観的構成要件に該当する。

⑵そして、かかる暴行行為を避けようとしたBが転倒し路上に頭を打ちつけ生理的機能を害したのだから、この行為は「傷害」(205条)にあたる。そして、B死亡という結果が発生しているから、Bへの傷害致死罪の客観的構成要件に該当する。

⑶そして、B、Cを追い払うために鉄パイプを振り回すという暴行行為に及んでいるのだから、Cへの暴行罪及び暴行罪の結果的加重犯であるBへの傷害罪の故意は認められる。

⑷よって、上記行為は両罪の構成要件に該当する。

2、違法性阻却事由の有無

⑴そうだとしても、甲は自分の息子Aを蹴りつけるなどの危害を与えるB、Cに対抗する意図で、上記行為に及んでいる。

そこで、かかる行為に正当防衛(36条1項)が成立し、両罪の違法性を阻却しないか。

⑵当初BはAを羽交い締めにして、CはAの顔面を手拳で殴打しており、その後Aが倒れ込んだ後にAを蹴りつける攻撃行為をなおも継続した。これは明らかにB、CからAに対しての暴行罪(208条)が成立する行為であって、Aの身体に対する違法な法益侵害といえるから、「不正な侵害」といえる。

さらにその違法な法益侵害は甲が上記行為に及ぶ時点まで現存していたのだから、「急迫」性も認められる。

⑶しかし、甲は上記行為に及ぶにあたり、息子に危害を加えるB、Cに憤激している。このような攻撃的な意思を有して及んだ行為は「防衛するため」といえるか。防衛石の要否・内容が問題となる。

ア)そもそも正当防衛の成立に防衛の意思を要するか。

36条の趣旨は、急迫不正の侵害への私人への対抗行為を例外的に許容することにある。よって、防衛行為には社会的相当性が求められるので主観面も考慮すべきである。また条文も「防衛するため」と文言上求めているので、正当防衛に防衛の意思は要する。

イ)もっとも、防衛行為は侵害行為に反射的になすことが通常であるから、積極的な防衛の意思まで要求するのは妥当ではなく、単に侵害行為に対応する意思で足りる。また、かかる観点に照らせば、侵害行為に反射的に攻撃的意思が発生するのは自然といえるから、攻撃的意思が防衛の意思を大きく上回りもっぱら攻撃のみを意図しているなどの場合を除いて、攻撃的意思と防衛意思が併存するとしてもなお当該行為は「防衛するため」と認められると考える。

ウ)甲はたしかにAに危害を加えるB、Cに対して反射的に憤激して攻撃的意思を有してはいるが、同時にAの身を守らないといけないという防衛の意思もまた認められるので、甲の行為は「防衛するため」になした行為と言える。

⑷では、甲による上記行為は「やむをえずした行為」と言えるか。行為の相当性の判断基準が問題となる。

ア)正当防衛は「正対不正」の関係でなされるものであるから、緊急避難とは異なり、当該行為以外の手段は選び得なかったことまでは要求されず、また法益のバランスも厳格には求められない。よって、当該行為を取り巻く事情全般に照らして、法益侵害から防衛するにあたり必要限度の行為であれば、「やむをえずした行為」と認めて良い。

イ)B・Cは素手であるにも関わらず、当たれば大怪我を負わせる可能性が低くない約60cmの鉄パイプを振り回した甲の行為は、一見、防衛にあたり必要最小限の行為ではないようにも思える。しかし、甲は48歳である上に一人であるのに対して、Bは21歳、Cは20歳と30歳近くも若く体格も大柄、さらに二人組であることを考えると、B・Cが暴力に訴えたとすれば甲が素手では対抗できないであろうことは容易に想像がつく。さらに周りに人がいないのだから、他者の助けが入るとは想定できない。この状況を考えると、甲がなにかしらの武器に頼らないとAと自身を守りえないと考えることは自然である。そして、鉄パイプはたしかに攻撃力は一定程度あるといえ、刃物とは違い触れるだけで怪我を負わせる類の武器ではない。また、武器になりえるものが無数にある訳でない道端で、武器に頼らざるをえない甲はとっさに落ちていた鉄パイプを用いたにすぎない。さらにその使用容態も、B・Cの2m先で約60cmの鉄パイプを振り回したというのだから、甲が執拗にB・Cに怪我を負わせようとしたとも考えられず、甲はあくまでB・Cを追い払う行為に終始していたと言える。

これら甲の防衛行為を取り巻く事情全般に照らせば、甲の行為はAと自身の身体を防衛するにあたり必要最小限に留まっていたと考えられ、「やむをえずした行為」と認められる。

⑸したがって、甲の行為には正当防衛が成立し、その違法性は阻却される。

3、よって、甲の行為につき、Cへの暴行罪、Bへの傷害致死罪は成立しない。

以上

 

【感想】

ザ・正当防衛の事例という感じがしました。

色々、応用的な正当防衛事例をこれから先は向き合わないといけないんでしょうが、その前提にこういう典型的な問題をしっかり書けるようになるのが当面の目標です。

 

①構成要件該当性

個人的に正当防衛はあてはめ頑張らなきゃいけないのかな、と思っていて、そうなると構成要件該当性は出来るだけコンパクトにしたい気持ちはあります。

けど私は各論をほとんど触っていないのもあるので、練習のつもりで気持ち丁寧にあてはめました。

②急迫性の侵害

前問が急迫性が主戦場となる問題でした。

 

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 ですから勢い厚く書きたい気持ちも出ましたが、この後に重たい要件検討を最後まで通り過ぎなきゃいけないと思いましたから、ここは「急迫性=違法な法益侵害が現存するか間近に迫っていること」を念頭に、論証を抑えました。

これでも長いかな?と思ってます。

 

③防衛の意思

ここももっとコンパクトに書けたと思います。

まあ、でも今の時点でコンパクトさを求めすぎるよりは、必要十分な論証をしたいと思って丁寧めに書いたつもりです。

④防衛行為の相当性

問題文を見る限り、相当性を検討する事情が散りばめられていたので、ここが主戦場と睨んで、あてはめを丁寧にしました。

本当は「甲よりずっと若くて体力のあるだろうAが、なす術もなくボコボコにされているんだから、おじさんの甲が武器に頼っても仕方ないよね」的なあてはめも思いついたんですけど、ちょっとはしゃぎすぎかな?と思ったのと、それだけで結構長くなりそうな気がしたのと、その割にはめちゃくちゃいいとまでは思わなかったので控えました。余裕があれば書いても良かったかもです。

ちなみに武器対等の原則は規範に盛り込みませんでした。

判例(平成元年11月13日)を見る限り、武器の対等性は考慮要素にすぎないのかな、思ったからです。

なんとなく判例は具体的・実質的に見ていて、規範というよりはあてはめの説得力で相当性を導いているような印象があるので、規範レベルでは割と広めの幅を持たせたかったという意図です。

それで前問で使った、判例最高裁平成29年4月26日)の文言を借用してこんな感じの規範にしましたが、どうなんでしょうか。

あてはめに関しては、

 

相当性を否定しそうな事情(武器を持ってたとか)→実質的には戦力差がある、助けは期待できない。だから武器は必要→武器の強度は最小限度、他に武器になりそうなものはなかったからチョイスとしても最小限度→防御の容態も最小限度→だから必要でかつ程度も最小限の防衛行為

 

という風に段階を踏んで必要最小限という規範の要件該当性を論証したつもりです。

 

 

個人的にはあてはめ好きなんですけど、はしゃぎたくなるのと長く書きすぎな気もするので、ちょっとバランスは気をつけないとですかね、多分。

以上です。

 

 

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害しまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

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『工藤北斗の実況論文講義 刑法(第2版)』第5問の私の答案 

【問題文をざっくり言えば】

強盗されるとわかっていた行為者が、それを機会にナックルダスターという聞いたこともない武器をはめて相手を殴りつけた積極的加害意思の事例です。

相当性までいってたら、あやうくナックルダスターのあてはめができないとこでしたので急迫性で切れるよう頑張りました。

 

 なお強盗しようとした人の罪責も検討します。

 

なぜ問題文がざっくりなのかについてはこちら。

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第1、乙の罪責

1、乙がナイフを上着のポケットに入れていた行為につき、強盗予備罪(237条)の成否を検討する。

2、乙は甲を脅して金員を強奪するという「強盗の罪を犯す目的で」、上記行為をしたのは「予備をした」と言えるから、同罪が成立し、乙はその罪責を負う。

第2、乙の罪責

1、強盗未遂罪(236条1項、243条)の成否を検討する。

2、構成要件該当性

⑴本件において、乙は甲の金員を強奪するには至っておらず、強盗既遂罪(236条1項)は成立しない。

⑵では、乙がナイフを手にしようとした行為が「実行に着手」(43条本文)したとして、同罪の未遂罪(243条)が成立しないか。

ア)実行着手性の有無の判断基準が問題となる。

イ)未遂犯の可罰根拠は、構成要件的結果発生の現実的危険性の惹起にある。となれば、「実行の着手」の有無は行為時にかかる危険性が生まれていたかで判断すべきである。

ウ)乙がナイフを手にしようとした行為は、甲が乙より金員を「強取」(236条1項)するにあたり、事前の計画通りに武器を使って強取行為を容易かつ確実にするためにした準備的行為であると言える。そうだとすれば、その準備的行為に至った時点で同罪の結果発生の現実的危険性が発生していたと言えるから、実行着手性は肯定できる。

エ)また、乙は甲を脅して金員を強奪しようと考えていたのだから、その故意も認められる。

オ)よって乙の上記行為につき、強盗未遂罪(236条1項、243条)が成立し、乙はその罪責を負う。

第3、甲の乙への殴打行為につき、傷害罪(204条)の成否

1、構成要件該当性

⑴甲は乙の顔面を殴打し、全治2ヶ月の頬骨骨折を負わせており、「人を傷害した」と言える。

⑵また、甲は乙を殴りつけてやろうと考えていたので、故意も認められる。

2、違法性阻却事由の有無

⑴しかし甲は、乙が甲に対して強盗する計画を立てていることを、乙の客室から発見したメモから把握しており、上記殴打行為はそれへの対抗行為であったとも思える。

そこで、甲の殴打行為につき、正当防衛(36条1項)が成立しないか。

⑵同条に言う「急迫」とは、法益侵害が現存するか、または間近に迫っていることを言う。

第2で述べた通り、乙は甲に対して強盗をなそうとしていたのであり、乙が上着のポケットに手を入れてナイフを取ろうとした時点で、強盗罪の結果発生の現実的危険性は発生していたのだから、「不正」な「侵害」が間近に迫っていたと言える。よって、「急迫」性は認められるかに思える。

⑶しかし、甲は乙による強盗計画を事前に把握し、その侵害を予期したうえで上記対抗行為を行っている。

ア)かかる場合でも、「急迫」性は失われないか。

イ)36条の趣旨は、緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容することにある。そこで、行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして、かかる趣旨をもっても許容できない対抗行為は急迫性の要件を満たさないと考える。

ウ)乙は従前より甲の食事に難癖をつけるなどして、両者の関係は悪かった。そして、前述のように甲は強盗計画が明確に記されたメモを乙の部屋で発見しており、険悪な関係にある乙がその計画を実行する可能性は非常に高いと甲は十分に予期していたと思われる。またメモのみならずナイフも発見したことを考えると、この計画は明らかに強い暴力が伴うものであることもまた甲は予期していたと思われる。一方、たしかにペンションを経営する甲には乙以外の客を対応する必要性はあり、乙から逃れるためにペンションを離れるという行動は採り得なかったのかもしれない。しかし、甲が乙の部屋を掃除していた事情から考えるに、それでもなおメモとナイフを発見した時点では、乙はその場におらず、警察に連絡するなどの時間的・状況的余裕はあり、かかる措置は容易に講じれたと考えられる。それどころか、乙の計画のナイフを使うという凶暴な性質を考えると、他の客がいるならばなおのこと警察に連絡すべき状況だったと言える。

にもかかわらず、甲はこういった措置を採るどころか、この機会を利用して乙を殴りつけてやろうという積極的な加害意思をもち、拳にはめて打撃力を強化する武器であるナックルバスターまで用意して対抗する準備をしている。そして、乙がナイフを取ろうとポケットに手を入れるや否や、ナックルバスターをはめた拳で乙の顔面を殴打するという対抗行為に及んだのである。

このような上記対抗行為全般の状況に照らして考えれば、甲の採った対抗行為は36条の趣旨が許容する行為と認めることはできないのであるから、急迫性は失われていると考えるべきである。

エ)よって正当防衛は成立せず、違法性は阻却されない。

3、したがって同罪は成立し、甲はその罪責を負う。

以上

 

 

【感想】

ナックルダスターという聞いたこともない文言を二回続けて書いたときは笑いそうになりました。

さて。

 

①実行の着手

第4問と同じく実行の着手が問題となりました。

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 第4問では第1行為と第2行為に分けた上で両者の近接性を検討する規範を立てたのですが、第5問では第2行為となる(?)強取行為が実際にはされていないことを考えて、そこまで厳密には規範を立てずに、(私が思う)上位規範である「未遂犯の可罰根拠は、構成要件的結果発生の現実的危険性の惹起にある。となれば、「実行の着手」の有無は行為時にかかる危険性が生まれていたかで判断すべきである。」とだけ立てて、さっさとあてはめに入りました。

今回はどう見ても甲の正当防衛の成否が大きな問題となるので、そことのバランスを取ったというのも当然あります。

 

工藤先生の解答例にある「準備的行為」という文言は、実行の着手を検討するに当たって、すごく使いやすいです。

判例の文言なのかな?

 

 

②侵害を予期していた場合の急迫性の判断基準

数年前に私が刑法の勉強をしてた頃は積極的加害意思という論点だったと思うし、今もそうなのかもしれないですが。

工藤先生の解説でも紹介されているように最近、以下の新しい判例最高裁平成29年4月26日)が出たようで、積極的加害意思は上記の場合に急迫性が認められない1類型となったのではないかと個人的には思いました。

行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性,侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。

 規範が長い。笑

で、あてはめは

被告人は,Aの呼出しに応じて現場に赴けば,Aから凶器を用いるなどした暴行を加えられることを十分予期していながら,Aの呼出しに応じる必要がなく,自宅にとどまって警察の援助を受けることが容易であったにもかかわらず,包丁を準備した上,Aの待つ場所に出向き,Aがハンマーで攻撃 してくるや,包丁を示すなどの威嚇的行動を取ることもしないままAに近づき,A の左側胸部を強く刺突したものと認められる。このような先行事情を含めた本件行 為全般の状況に照らすと,被告人の本件行為は,刑法36条の趣旨に照らし許容さ れるものとは認められず,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきであ る。 

とのことです。

 

これからは私の浅学な私見ですが。

上記規範の核は

緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさない

の部分なのだと思います。

もっと論証ぽくすると、

「36条の趣旨は、緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容することにある。そこで、行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして、かかる趣旨をもっても許容できない対抗行為は急迫性の要件を満たさないと考える。」

ぐらいに私は整理しました。

要は「問題となる対抗行為が36条趣旨で許容できるか否か」という、ある種なにも言ってないに等しい広範な規範を立てた代わりに、「行為に先行する事情を含めた行為全般の状況」という考慮要素を以下のようにかなり具体的に、かつたくさん列挙してくれた判例に思いました。

 

①行為者と相手方との従前の関係

②予期された侵害の内容

③侵害の予期の程度

④侵害回避の容易性

⑤侵害場所に出向く必要性

⑥侵害場所にとどまる相当性

⑦対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等)

⑧実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同

⑨行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容

⑩等

 

個人的には

 

①関係が悪かったら許容されやすくなるのか否か

②予期された侵害の内容がどうだと許容されやすくなるのか

⑧実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同、に至ってはその意義。どう異なってたらどうなるのか。

 

あたりは、いまいちイメージが湧きません。

 

が、考慮要素を例示してくれた分、相対的にはかなりあてはめはしやすくなった気がします。

 

ちなみに私は上記答案にもあるように考慮要素を規範に入れないで、あてはめで活用するイメージで書いてます。

考慮要素といえども、一般的で普遍的で抽象的なものだとはたしかに思うのですが、要件ではない分、具体的なところで述べて抽象的な要件該当性を検討するのかな?と思うからです。

このあたりはどうなんでしょうね。

 

 

 

ともかく多分、判例としては

 

たしかに単に予期しているだけでは急迫性は切れない。

(予期していたらどんな時でも侵害を回避する行動をしなきゃいけない義務を課すのはいくらなんでも縛りすぎと後掲判例で述べてるっぽいです。確かに病気のお母さんのところに駆けつけるために、暴走族がたむろする裏道を一か八か通る自由ぐらいは欲しい気もします。そして上記規範ではこの自由は認められるように思うのです)

けど、それは予期できた状況の中での対抗行為が全て許容されるわけではもちろんないことは、前(最高裁昭和52年7月21日)の積極的加害意思の時にも言ったよね?

それで積極的加害意思は⑩だけども、要は急迫性を満たさない1類型に過ぎないんだよ。

 

と、言ってくれているような気がするようなしないような気がします。

そんな感じで、上記答案の規範とあてはめになったのでした。

しかし、2年前の判例をしっかりケアしてくれている『論文実況中継』のアップデートの質には驚きました。

予備校の授業ならともかく市販されてる問題集ですからね。

それとも今時の予備校系の問題集はみんなこうなんだろうか。

頭が下がります。

 

 

感想が長いな。笑

頭の整理にはなりますが、勉強時間を圧迫しないようにバランスを取っていきます。

それに判例を分析する時間もいい加減にしないとですね。

以上です。

 

 

ご意見・ご感想は批判を含めて歓迎です、荒れて欲しくはないですけど。

また、もしこの記事が著作者の方の気分を害されたり、権利を侵害してしまったとのことでしたら、以下の記事で表明した通り、真摯に対応させていただきます。

その場合は、お手数ですがご一報ください。

 

 

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